IMSAウェザーテック・スポーツカー選手権のGTDプロクラスで、ポルシェ911 GT3 Rを走らせているパフ・モータースポーツは、ポルシェが開発中のLMDh車両『963』を用いた将来のGTPクラスでのプログラムが「レーダーに映っている」としているが、現在は車両のランニングコストを見極めている最中である、と語っている。
ポルシェは現在、2023年のIMSAおよびWEC世界耐久選手権のトップクラスに、ファクトリーから4台、カスタマーから4台、計8台の車両をデビューさせる計画を明らかにしている。
2023年のIMSA・GTPクラスには、既報のJDCミラー・モータースポーツを含むふたつのプライベーターチームが参戦するが、ポルシェ・モータースポーツ・ノースアメリカ社長兼CEOのフォルカー・ホルツマイヤーによれば、2024年にはポルシェはIMSAとWECの両方でカスタマーへの割り当てをそれぞれ最大2台、拡張することを検討しているという。
その結果、パフのようなチームにも、2024年は最高峰クラスへのステップアップの道が開かれることになる。パフでは現在、マシュー・ジャミネとマット・キャンベルが911 GT3 Rをドライブしているが、このふたりはすでに来季のポルシェ・ペンスキー・モータースポーツのLMDhドライバーラインアップに指名されている。従って2023年のパフは、GTDプロを継続するにしても異なるラインアップを採る必要がある。
「いつかLMDhに参戦することは、我々の願望だ。あとは金銭面について理解し、設定された予算が正確なものであることを確認するだけだ」と、パフのチームマネジャー、スティーブ・ボルトロッティは語っている。
「ポルシェの名誉のために言っておくが、彼らもまだ把握している最中だ。全員がその実現に向けてベストを尽くしているところだと思う」
「ただ、残念なことに、我々は闇雲にダーツを投げられるような状況にはない。我々が推測しているのは、GTDプロの全予算のようなレベルのものなのか? だから最悪の場合は、再びGTDプロをやることになるかもしれない」
「GTPをやりたいという声は少なくない。ただし、それは商業的、金銭的に納得のいくものでなければならない」
ボルトロッティは、2023年については再びGTDプロのグリッドにつくことに「自信がある」としながらも、早ければ2024年シーズンにGTPへとステップアップできるようにしたい、と語っている。
ポルシェ963の購入費用についてはすでに判明しており、ホルツマイヤーは(サポート込みで)290万ドル(約4億円)だと明らかにしている。だが、スペック・ハイブリッドを搭載する新規定プロトタイプをオペレートするのに必要な、正確な全体予算はまだ不透明だ。
この金額については『500万〜700万ドル』という見積もりをSportscar365は耳にしているが、現在の市場の変動やサプライチェーンにおける制約など、その他の変動要因を考慮すると、これはあくまで目安となる数字にすぎない。
「今後12カ月間のある時点において決定を下し、パートナーたちを取り込むことができればと思っている」とボルトロッティは言う。
「誰もがこのプログラムをやりたがっている。情熱が欠けているわけではない。ただ、それが本当に必要なコストなのか、理解することが必要だ」
「私だけがそう言っているわけではないが……予算について推測することは──とりわけそれが自分の金でない場合は──あまり得意ではないんだ」
このカテゴリーで採用されるハイブリッド・パワートレーンについては、運用コストの面でも未知数であるとボルトロッティは付け加える。
「私が恐れている別の問題は、電気とバッテリーについてだ。それらは、世界が電動化を採用していくにつれて安くなるというものではない。それらはなかなか安くならないのだ」と彼は言う。
「だから、そこが不安なところだ。バッテリーの実際のコストはいくらなのか? そしてそのコストは12カ月後にはいくらになっているのか? と」
「そして、輸送費もだ。バッテリーを空輸するには、どうすればいい? これらについて、まだ答えは得られていない。(このプログラムを)実行するには、リサーチを続ける必要がある」
「だが実際のところ、我々はそれをやりたい。我々は一貫して、最高のものに挑戦し続けたいのだ」
「コルベットがここ(GTDプロ)にいてくれるおかげで、我々は地球上で最高のGTチームとレースをすることができている。そう信じている。毎週毎週、彼らとレースをすることが我々のモチベーションとなっている」
「いまいる場所(GTDプロ)でのレースにおいて、我々が劣っているとは思わない。ただ願望として、そしてこのスポーツのファンとして、これからもずっとその黄金時代の一部でありたいと思っているのだ」