ヨコハマタイヤ勢がトップ2に並び、上位グリッドをGRスープラ勢が占める形になったスーパーGT第4戦富士のGT500クラス予選結果。日曜の決勝もポールのヨコハマタイヤの19号車WedsSport ADVAN GRスープラを含めたGRスープラ勢の戦いが予想されるが、ドライバーたちはどのような手応えを感じているのか。上位のGRスープラ勢たちはどのチームも、決勝に向けて自身満々のようだ。
今回の優勝候補筆頭に挙げられていたのが、36号車au TOM’S GRスープラ(サクセスウエイト/SW27kg)、37号車KeePer TOM’S GRスープラ(SW22kg)のトムスの2台だ。第2戦の富士でもこの2台は優勝争いを演じ、結果的に1コーナーで同士討ちになってしまい優勝を逃したが、決勝でのクルマのパフォーマンスは2台とも抜群に高かった。
今回の予選でも37号車が3番手、36号車が6番手と予選で上位を獲得。明日の決勝に向けて両者ともかなりの手応えを感じているようだ。
まずは36号車のau TOM’S GRスープラの坪井翔。予選Q1を担当してトップと同タイムの2番手でQ1を悠々とクリアした。
「タイム自体は満足できるアタックではなかったかなと思います。1周にまとめてアタックすればコンマ3秒くらいは上げられてトップになれたと思うのですけど、Q1は確実に突破するのが目的でしたので2週連続アタックを遂行して、結果的にはどっちつかずのタイムで微妙な感じになりました。Q1を担当して仕事としては目的を達成できてよかったのですけど、満足できるアタックだったかというと、本当なら出せたタイムが出せなかったということで、満足ではないですね」
36号車の飛躍の鍵を握るのは、坪井のチームメイトで今年GT500ルーキーのジュリアーノ・アレジのパフォーマンスになるが、Q2を担当したアレジは6番手タイムをマーク。坪井はこのアレジのパフォーマンスに合格点を与える。
「ジュリアーノもすごく成長していて、これまでQ2で8番手とかのタイムだったのが6番手まで上げてくれました。同じBS(ブリヂストン)勢で見ても3番手の宮田莉朋選手(KeePer TOM’S GRスープラ)と約コンマ3秒差なので、今回はジュリアーノ選手の成長をすごく感じられた予選でした。順位以上にチームとしての底が上がったと思うので、決勝に向けても悲観視はしていないですし、トップまであとちょっとの領域まで来たのかなと思っています。これからが楽しみです」と坪井。
「クルマの調子はいいですね。もちろんヨコハマさんのクルマは速くて、あそこまでのタイムは僕がQ2で乗ったとしても行けないと思うのですけど、BS内の順位、そしてサクセスウエイト(27kg)を考えてもクルマのパフォーマンスは相当高いと思っています。明日は気温とかコンディションによってレース戦略は変わると思うのですけど、前回は8番手スタートからトップまで上がれているので、今回6番手スタートと考えると前には5台しかいないので、長いレースでミスなくやれれば優勝できるチャンスは多いにあると思っています」と手応えは十分のようだ。
同じトムス陣営の37号車KeePerも予選3番手で好調さをアピール。予選Q2を担当した宮田が振り返る。
「タイヤ選択的に今日のコンディションでは温度領域が外れていたのですけど、BS勢でトップで3番手というのは大きい結果ですし、レースを見据えてのタイヤチョイスですので、明日はいい位置からしっかりスタートしていいレースをしたいなと思っています」と宮田。
低気温のなかでの苦労もあったようだが、決勝に向けての表情は明るい。
「予選のウォームアップは結構大変でした。実際、僕は予選用のニュータイヤを練習走行で履いていなかったので、ウォームアップがどんな感じなのか分かっていなくて、サッシャ選手からの情報を頼りに想像して走っていたので、結構難しかったです。2周アタックできる予定で行って、計測4周目にアタックに行ったのですけど、リヤのグリップがまだ来ていなくて、コカコーラ・コーナーで四輪脱輪してしまって1回目のアタックはそこで止めて、次の周にもう一度アタックに行ったのですけど、それでもまあ、予選のウォームアップは厳しかったですね」
「(フロントロウの)ヨコハマタイヤは経験上、この時期に速いのは知っていますし、決勝はBSが強いと思っています。明日の方が暖かくなるという想定でタイヤを選択していますし、今日もロングランのフィーリングも悪くないですし、あとは最近のGTでは燃費がすごく重要な要素になっていますので、そのあたりの心配が大きいですね。ニッサンとホンダは僕らより燃費はいいと思うので、そのあたりのピットストップのタイミングとか不安はありますが、それでもいいレースをして、優勝を目指したいです」
今回ポールを獲得した19号車WedsSport ADVAN GRスープラは宮田の昨年までの在籍チーム。ヨコハマタイヤの経験者だけに、その言葉はたしかに信憑性は高い。だが、ポールを獲得した19号車も昨年とは違い、最近の進化も著しい。19号車の坂東正敬監督が今回のポール獲得、タイヤ開発の充実ぶりを語る。
「持って来たタイヤの中では高温側のタイヤであのタイムが出ました。夏の富士で戦えるタイヤを持ち込んで、そのために鈴鹿やSUGOでテストをしてきて、前々回の第2戦の富士とは全然違うタイヤを持って来ました。ヨコハマタイヤさんが開発してきたタイヤを今回の予選でテストしたみたいな部分もあるのですけど、それでもその開発がドライバーも、ヨコハマさんも、そのタイヤにクルマを合わせられたエンジニアさんも、今年に関してはうまく進んでいる。違うサーキットでもポールポジションを獲れて、同じサーキットでも2度目のポールポジションを違うタイヤを使って、違うコンディションのなかで獲れた。タイヤ開発の狙いと結果の結びつきってなかなか難しいのですけど、そこがリンクしてきた結果だと思っています」と、坂東監督。決勝に向けても、ラップタイムの安定性に自信があるようだ。
「ウォームアップの問題とかまだまだ課題はあるのですけど、前回の第2戦富士でも内圧が上がってからはコンスタントにラップタイムを刻めていた。その分、作戦の幅が広がった部分があるので、今回も富士と鈴鹿、暑い2連戦でコンスタントに走れるタイヤをテストしてもってきたので、コンスタントに走れると思っています」
ランキング2位でサクセスウエイト52kgでリストリクター制限が入った14号車ENEOS X PRIME GR Supra 、そして午燃料系のトラブルで午前の専有走行ができなかったことが響いた39号車DENSO KOBELCO SARD GRスープラの2台をのぞき、残りの4台が予選上位に食い込んだGRスープラ陣営。
ヨコハマタイヤでポールの19号車がスタート直後の数周を抑えられるか、それとも後続のGRスープラ勢が容赦なく19号車に襲いかかるのか。それとも『真夏のGRスープラ祭り』を阻止すべく、ニッサンZ、ホンダNSX-GTが巻き返すのか。GT500クラスの決勝はいろいろ見どころの尽きない戦いになりそうだ。