2カ月ぶりに熱戦が展開された2022年スーパーGT第4戦『FUJIMAKI GROUP FUJI GT 100Lap RACE』だが、各所では細かなアクシデントやトラブルが起きるなど、波乱含みの決勝レースにもなった。その中でGT300クラスのドライバーズランキング首位を快走するリアライズ日産メカニックチャレンジGT-Rも、1回目のピットストップでちょっとしたハプニングがあったが、無難に乗り切ってクラス6位入賞を獲得した。
今回は99kgという非常に重いサクセスウエイトを背負っていた56号車。その状況下でも、予選ではQ2進出を果たし、10番手スタートを手にした。
決勝は藤波清斗がスタートスティントを務め、26周と見積もっていたドライバーミニマム周回数で最初のピットストップを行ってジョアオ・パオロ・デ・オリベイラに交代し、ダブルスティントを務める予定だった。
しかし、急きょ2周早い24周目にピットインをすることとなり、いったん藤波がマシンを降りかけてからまた乗り込むなど、バタバタした様子だった。
その時の状況について、ピットでヘルメットを被っていたオリベイラはこう語る。
「最初の予定としては26周目で1回目のピットを行って、そこから僕に交代してダブルスティントをする予定だった。ちょうど、ドライバー交代のために準備をしていたんだけど、24周目くらいにチームが『もうすぐピットインだから準備をして!』と言われて、スタンバイをしていた」
「待っていた時は、無線を聞いていなかったから、チームと直にコミュニケーションがとれていなかったんだけど、24周目に藤波がタイヤトラブルを抱えていて、ブリスターみたいなことが起きていた。それで、急きょその周に入ってきた。その状況を知らなかったから、僕も急いでドライバー交代をしようとしたんだけど、エンジニアが『今はドライバー交代できない』と止められて、それでピットガレージの中に戻ったんだ」
「何より不運だったのは、タイヤトラブルが起きたタイミングだ。それが2周後だったら、予定どおりドライバー交代をして僕がダブルスティントにいけたけど、それが崩れてしまった」
もし24周でドライバー交代をしてしまうと、周回数が90周を超えてしまった場合は後半担当ドライバーが最大周回数規定をオーバーしてしまう(特別規則書により、『当初のレース距離の2/3の周回数』は66周と規定されている)。
一方、第1スティントを担当していた藤波はタイヤトラブルに苦しみながら走行を続けていたようで、「本当はもっと早く入りたかったんですけど、できる限り粘りました。でも『もう無理!』となって、あそこで入りました」と、当時の状況を振り返った。
思いも寄らぬ形で藤波がダブルスティントを務めることになったのだが、その後は問題なく周回を重ねていき、59周目に2回目のピットストップを敢行し、レース後半をオリベイラが担当。オリベイラは追い上げを見せ、最終ラップにもひとつ順位を上げて6位でゴールし、5ポイントを稼いだ。
今回は非常に重いサクセスウエイトを背負った中でのレースだったが、その中でも順位を上げられた一番の要因について、オリベイラは“サバイバルレースの展開”になったことを挙げた。
「今回は土曜日の予選もすごく涼しかったし、週末の走行が始まる前に雨が降ったこともあって、路面コンディションは“グリーン(埃っぽい)”という感じだった。それで決勝日は気温が上がっていったし、レース前に少し雨が降って、いつもと違うコンディションで、みんなにとって新しい経験になっていたような気がする」
「レース中もいろいろなところでトラブルが起きていた。4号車や55号車、65号車、10号車。上位陣の何台かが何かしらのトラブルを抱えていて、ある意味サバイバルな展開になっていた」
「その中で僕たちはすごくラッキーだったのかもしれない。とはいえ、僕たちも問題があったからね。もし、それがなくて順調に走れていれば5番手くらいはいけたと思う。だけど、サクセスウエイトなどの状況を考えると、今回の結果も良かったと思う」
逆に今回ポイントを稼げなかったライバルたちが、第5戦の鈴鹿でもウエイトが軽い状態になるという懸念点はあるのだが、オリベイラも次戦の鈴鹿に向けては手応えをつかんでいる。
「今回から第6戦にかけての中盤戦の中で、今回が一番キツいレースになると思っていた。なぜなら僕たちだけがウエイトがすごく重い状態だったからね。この中盤戦で周りも重くなっていって、そこからの勝負になると思っていた」
「これで61号車や18号車が重くなったのは良いのだけど、2台のメルセデスとか、55号車、10号車はまだウエイトが軽い状態で次のレースを迎えることになるから、次回以降もかなり手強い存在になると思う。だけど、次の鈴鹿に関しては、僕たちはフルウエイトを積んだ状態でテストをしていて、対策もできているから、次回に向けては自信がある」
苦しい状況でも確実にポイントを持ち帰るレース運びをみせている56号車。この勢いが後半戦も続けば、2020年以来となるGT300チャンピオンも現実味を帯びてきそうだ。