MTが設定されているクルマが激減した昨今。クルマ好きな人ならばともかく、生活の道具はたまた移動手段としてクルマを使っている人であればAT車のほうが運転が断然楽チンなのだから、AT車が幅を利かせるのは当たり前。では、MT車のようなペダル操作やギヤチェンジが不要なAT車は運転していて楽しくないのかといえば、答えはノー! 今どきのATは完成度が高いうえに進化が著しく、走りは良ければ燃費もグー! ここでは個性的なATを採用する5モデルを紹介するが、アナタの好みはどれ?
文/FK、写真/スズキ、スバル、ダイハツ、トヨタ
【画像ギャラリー】見逃すと損!! MT車をしのぐ楽しさを味わえるAT車をもっと見る(19枚)画像ギャラリー
ATの多段化は当たり前! 燃費も伝達効率もMT並みのLC500の“Direct Shift-10AT”
2012年の北米国際自動車ショーで発表されたプレミアムクーペコンセプトモデルのLF-Cをモチーフにした唯一無二のデザインを採用し、2017年3月にデビューしたLC500/500h。
レクサスのフラッグシップクーペを象徴する優雅でシャープな走りを実現した新開発の“GA-Lプラットフォーム”や、ハイブリッドのイメージを一新した“マルチステージハイブリッドシステム”などの最先端技術の導入もさることながら、構成部品のアルミ化による軽量化とパーツの小型化を図った乗用車モデル世界初の10速ATのであるDirect Shift-10ATが採用されて大きな話題を呼んだ。
アクセル操作に対して瞬時に呼応するダイレクト感とスムーズな発進を両立するトルクコンバーター式ATのDirect Shift-10AT。
発進時を除くほぼすべての領域においてロックアップを作動させることで、MT車のようなダイレクトな動力伝達を実現するだけでなく、アクセルやブレーキ、さらには車両にかかる重力加速度からドライバーの意図を読み取って最適なギヤを選ぶDMI(Driver’s Mind Index)制御も導入。6種類が設定されているドライブモードで運転特性の切り替えを行うことで、ドライビングの楽しさを存分に味わえるスペックが与えられている。
ダイレクトな走りと優れた燃費性能を両立したGRヤリスの“Direct Shift-CVT”
2020年9月に登場したGRヤリス。その頂点に君臨するのは、272psという最高出力を誇る1.6リッター直列3気筒インタークーラーターボエンジンと多板クラッチによる前後駆動力可変システムを導入したスポーツ4WDシステムを採用したRZグレードだが、GRの研ぎ澄まされた走りを気軽に楽しめるFFのRSグレードも見どころ満点。
なかでも、RSグレードのトランスミッションとして採用されたDirect Shift-CVT(ギヤ機構付自動無段変速機)は、トランスミッションの基本性能である“伝達効率の向上”、“エンジン高効率領域の活用”、“高応答変速”を強化した注目のパワートレーンだ。
乗用車用CVTとして世界で初めて発進用ギヤを採用して伝達効率の向上と力強い加速を実現するとともに、アクセル操作に対して一瞬遅れるようなもたつき感も改善したDirect Shift-CVT。また、発進用ギヤの採用にあわせて、クラストップレベルの変速比幅も実現。
加えて、小型化したベルトを狭角化するとともに、プーリーを小径化したことで変速速度も向上。マニュアル感覚の操作が楽しめる10速シーケンシャルシフトマチックのパドルシフトとの組み合わせもパワフルかつリズミカルな加速フィールで、意のままに車両をコントロールする気持ち良さを提供する。
WRX S4の“SPT”で人とクルマの究極の一体感を得よ!
1987年2月、“世界初のスーパーオートマチック”と銘打ったECVTを採用したジャスティが登場。電子制御電磁クラッチにエレクトロニクス技術を導入し、これにスチールベルト・プーリーを組み合わせて無段変速機の実用化に成功したスバルの新技術は大きな注目を集めた。
その登場から約22年後、“理想の無段階トランスミッション”と称されたリアトロニックを5代目のレガシィシリーズに採用、現在も主要モデルに搭載されている。そんな系譜を汲むスバルのCVTにあって、2021年11月に発表されたWRX S4では従来モデルからレシオカバレッジを拡大して加速性能を高め、振動と騒音の低減で動的質感も向上させたスバル・パフォーマンス・トランスミッション(SPT)を採用。
エンジンとの協調制御を最適化したスポーツ変速制御の採用で2ペダルのスポーツドライビングを極めた新トランスミッションとして開発されたSPTはアクセルやブレーキのペダル操作からドライバーの意思を読み取り、トルク制御やシフトダウン時のオートブリッピングなどを駆使してシフト操作を行うことで変速速度の向上とキレのある変速感覚を実現。まるでMTを操作しているような感覚を味わうことができる。
タントの“D-CVT”はストレスフリーな発進とスムーズな加速が魅力!
2003年の発売以来、圧倒的な室内空間の広さと使い勝手の良さによってスーパーハイト系という新たな市場を開拓したタント。
2019年7月にダイハツの新世代のクルマづくり“DNGA(Daihatsu New Global Architecture)”による第一弾商品として発売された現行の4代目では、世界初となるスプリットギヤを用いたD-CVTの採用もトピックとなった。
CVTはベルトで動力を連続的に伝達する無段変速機で変速ショックがないスムーズな加減速が特徴となるが、その一方でトップギヤ状態からさらに速度を上げようとすると、変速比に限界があるためにエンジンの回転数をさらに上げていく必要があり、これが動力伝達効率の悪化やエンジンノイズの発生というデメリットを生んでいた。
しかし、D-CVTでは遊星ギヤを組み込んだギヤ駆動を従来のCVTに取り入れたスプリット駆動を採用することで、エンジン回転数の抑制と過度な燃料消費、さらにはエンジンノイズを低減。本方式の採用と油圧制御系統の改良などにより中~高速域の伝達効率を向上しつつも、低速域ではパワフルでスムーズな加速も実現。
室内空間の広さや使い勝手の良さにばかり注目が集まるタントだが、そのトランスミッションもまた注目に値するだけの新技術が導入されているのだ。
国内初採用の“6AGS”を搭載したエスクードのハイブリッドモデル
スズキの数ある次世代テクノロジーのひとつとして開発されたのが、クラッチ操作とシフト操作を自動で行う電動油圧式アクチュエーターを採用したトランスミッションのAGS(オートギヤシフト)だ。
現行モデルではスイフトやエブリイに採用されているAGSは一般的にAMT(オートメイテッドマニュアルトランスミッション)と呼ばれるが、ATやCVTとは異なるAGSの最大の特徴は“MTベース”のメカニズムを有していること。エンジンと駆動を直結できるメリットがあることからATやCVTに比べると燃費は良好で、高速領域でも高いギヤを選択できることから静粛性も高い。
その反面、クラッチ操作を自動で行うAGSは、ATやCVTのようにアクセルを踏み続けて走行すると変速ショックが大きく、ギクシャクした加速になりがち……だが、変速のタイミングでアクセルを一瞬抜くことで解消することが可能。
これをデメリットと捉えるのかどうかは十人十色だが、そんなAGSの6速仕様が2022年4月に発売されたエスクードのハイブリッドモデルに国内初採用。滑らかな加速や高い伝達効率による燃費の向上を実現するとともに、マニュアルモードを選択すればパドルシフトによるMT由来のダイレクトなフィーリングも十分に楽しめる。
【画像ギャラリー】見逃すと損!! MT車をしのぐ楽しさを味わえるAT車をもっと見る(19枚)画像ギャラリー
投稿 やっぱ楽しさはMTだという既成概念を覆す!! 「あえてAT」がいいクルマ5選 は 自動車情報誌「ベストカー」 に最初に表示されました。