2022年のグッドウッド フェスティバル オブ スピードでデビューした最初のBMW M3ツーリング。それは(ほぼ)私の理想のM3そのもので、展示されているモデルそのものを、ぜひ持ち帰りたい(!)と思った。
6代目となる「M3」で、ついにBMWがツーリングの開発を敢行した。ブランド誕生50周年に合わせ、2022年の「グッドウッド フェスティバル オブ スピード」の会場で初公開され、これ以上ないほどクルマ好きな観客の前に姿を現したのだ。展示された個体の装備や色の組み合わせは完璧だった。
私に97,800ユーロ(約1,370万円)の余裕があればこのモデルを持って帰りたかったし、なぜそれほどまでにこの「M3」を欲しがるのか、その理由を説明させてほしい。
510馬力と500リッターの収納スペースを持つM3ツーリング
完成度の高さはボディシェイプから。大きなパワーと大きなスペースの組み合わせ、それはまさに独創的だ。510馬力と500リットルの荷室、なかなかのものだ。あえて言うなら、サルーンよりツーリングの方が似合うとさえ思う。
独創的なカラーコンビネーション
2つ目のハイライトは、インディビジュアルの塗装色「デイトナバイオレット」だ。グレーやブラックといった単調な色から抜け出し、「M3」のラインを引き立て、BMWの歴史を物語る、まさに夢のような一台だ。「E36」に似合うものが、「G81」に似合わないはずがない。特にダークリムと光沢のあるブラックシャドウラインのアクセントが効いている。
さらに、黒と白の内装は、塗装とのコントラストが秀逸なので、このまま注文したい。ホワイトレザーは手入れが大変なのは、日常的に乗っている「M8グランクーペ」から良く心得ているがそれでも選択したい。
手触りの良いカーボンファイバー製張地
しかし、そんな「M8」で体感したものは、カーボン製のバケットシートがいかに快適で、旅行に適したものであるかということだ。グッドウッドで「M3ツーリング」にも装着されていたが、私にとっては絶対的な存在だ。0-100km/h加速は3.6秒、横方向の加速もそこそこあるので、シートのグリップは本当に必要となる。さらに、クールなルックスと旅行への適性をプラスして、オーダーしたい。
「M3ツーリング」が全輪駆動で510馬力を発揮する「コンペティション」のみの設定であることは、原理的に理に適っていると言えるだろう。北米や欧州市場では、コスト面からもフルファット版のみの展開が理にかなっているだろう。特に「ツーリング」では、性能の向上と日常的な使用への適性が両方とも得られるのは嬉しいことだ。
2つの小さな欠点
では、グッドウッドにあった「M3」は私のドリームカーだっただろうか? それはほぼ間違いない。しかし、完璧な「M3」のために、2つだけ変えたいと思ったことがあった。ガラスルーフの代わりにカーボンに、さらにセラミックブレーキの代わりにスチールを。
セラミックブレーキは、日常的に使うにはむしろ煩わしいものであるし、とにかくコストがかかるのだ。もちろん、長持ちするのが普通だ。しかし、もし交換することになれば、法外な値段になる。なので、普通のブレーキをチョイスしたい。
プレッシャーポイントやペダルの感触も、スチール製システムの方が優れている。また、雨天時はもちろん、窓が冷えた状態でもブレーキが適度に減速する程度だ。やはり、「ツーリング」は普段使いのためのものだ。
しかし、その好みがどうであれ、ファンの間では「BMWよ、ついにM3ツーリングを造ってくれてありがとう!」ということで一致している。
【ABJのコメント】
以前にも記したが、私は、BMWの「M3」といえば、やっぱり2ドアクーペモデルか4ドアセダン、でしょうという古い人間である。せっかくモータースポーツ部門が手塩に掛けた辛口BMWスポーツモデルなのだから、そりゃあなたワゴンのようなスペースユーティリティを重視した車じゃないでしょうに・・・、とやっぱり思ってしまう。
そんな偏見を持ちながら、今回グッドウッドで展示された「M3」の「ツーリング」を見て思ったことは、「もうMといえども走りに直球勝負の、辛口スポーツモデル路線はやめたのかもしれない」ということだった。「M3」の「ツーリング」、ということはワゴンボディであっても、ファミリーあるいはレジャー向けのMモデルとして、荷物満載でキャンプ地へまっしぐらということではなく、もっとラグジュアリーで普通のワゴンでは飽き足らないリッチな層に向けてのオシャレで高性能なワゴンという位置づけなのだろう。目を吊り上げてコーナーを攻めるなんていう性格ではなく、もっと余裕をもって乗りこなす伊達者のためのスポーツモデル、というのが今回の紫色に塗られた写真を見ながら感じた感想である。
もちろん走ってすごいことは想像つくし、なかなか人気も出そうだと思う。ライバルの「C43ステーションワゴン」にとっては、手ごわいライバルであろう。高価格で高性能な限られた層のためのスーパーワゴン、そんなところが「M3ツーリング」に与えられた位置づけであり、昔の「M3」のように峠を攻めたり、ましてやサーキットでタイムアタックしたりするような車でないことだけは明らかなようである。(KO)
Text: Moritz Doka
加筆: 大林晃平
Photo: autobild.de