6月12日、前日にスタートしたWEC世界耐久選手権第3戦/第90回ル・マン24時間は、レース開始から18時間が経過。残り6時間となったタイミングではTOYOTA GAZOO Racingの8号車トヨタGR010ハイブリッド(セバスチャン・ブエミ/平川亮/ブレンドン・ハートレー組)がトップに立ち、僚友7号車トヨタGR010ハイブリッドが4分20秒差で続いている。
真夜中に迎えたレース折り返しを平川亮がドライブする8号車と小林可夢偉の7号車によるワン・ツーで迎えたトヨタ勢。この時点で両車の差は18秒ほどだったが、周回数が200周を超えピット回数では17回目となったルーティンピットワークの際に8号車がややタイムを失う。
平川からブエミに交代してピットアウトする際に隣のピットボックスに車両がいたため、一度クルマを後方に戻す必要があった。直後、8号車は首位を守るも、小林可夢偉からマイク・コンウェイへとドライバーをスイッチした7号車に約5秒差に迫られる。
スタートから13時間を迎える直前、ポルシェコーナーで35号車オレカ07・ギブソン(アルティメット)がスピンを喫し、フロントをガードレールに激突させるとともにコースサイドの発泡スチロール板を破壊してしまう。
これによりコース上にはデブリ回収のためのスローゾーン(SZ)が出される。5秒差から1秒を切るギャップとなったトヨタ勢は、このSZが出ている間に毎回12周のルーティン・ピットワークのタイミングを迎え、スタートから一貫している7号車、8号車の順でピットに呼び戻した。
215周で入ったコンウェイの7号車、翌216周でピットインしたブエミ駆る8号車はともにSZが出ている中での作業となったが、後から入った8号車がコースに復帰すると7号車が逆転。コンウェイがブエミを約26秒先行している。
上位4台が同一周回で争っているLMGTEプロクラスでは、7時間過ぎからトップを守ってきた92号車ポルシェ911 RSR-19(ポルシェGTチーム)が14時間目目前でガレージイン。しかしトラブルではなく予定どおりのブレーキ交換だと思われ、最小限のロスタイムでピットアウトしていく。
これによりGTEプロは51号車フェラーリ488 GTEエボ(AFコルセ)がトップに浮上し、僅差で64号車シボレー・コルベットC8.R(コルベット・レーシング)が続く展開に。約15分後には92号車もこれに追いつき3メーカーの3車種がワンパックとなった。
その後、フェラーリがライバルたちから後れを取りはじめるなか、ピットタイミングの違いにより大きく離れる時間帯もあるものの92号車ポルシェと64号車コルベットが順位を入れ替えながら首位争いを続けている。
■首位快走中の7号車にトラブル発生
スタートから15時間を過ぎると、ハイパーカークラスでワン・ツー体制を築くトヨタの2台のギャップが20秒を切る。そんななか8号車のブエミからブレーキの不調を訴える無線が飛ぶ。
この報告の10分後、8号車は1スティント12周のルーティンを崩し10周でピットイン。特別な作業はなかったが、ピットアウト時に隣のピットの車両と接触しかけタイムを失った。僚友7号車のルーティンピット後、両者のタイム差はふたたび20秒以上に広がっている。
スタートから15時間47分後、国際映像にアルナージュの先でストップする首位7号車トヨタの姿が映し出される。直前のピットストップでコンウェイからロペスに代わっていた同車は「フロントモーターがリセットを要求した」ため、“パワーサイクル”と呼ばれるシステムの再起動を行い自力でピットに戻ったが、作業前にふたたびパワーサイクルを行う必要があり、しばらくメカニックがクルマに触れられない時間が続いた。
その後、安全性が確保された7号車は通常のピット作業が行われ、ドライバーはロペスのままトラックに復帰した。なお、7号車のトラブル発生前にイレギュラーのピットインを行なった8号車は12周のルーティンに戻っている。
一方の7号車は緊急ピットインの9周後にふたたびイレギュラーのピットストップを行なったが、これは右リヤタイヤのスローパンクチャーによるものだという。この時点で7号車はチームメイトから1周遅れとなった。
■波乱が続くル・マンの朝
レース開始から16時37分。LMGTEアマのクラス3番手を走行していた56号車ポルシェ911 RSR-19(チーム・プロジェクト1)が、デイトナ・シケイン(ユノディエールの第1シケイン)の侵入時にスピンしガードレールにクラッシュする。ドライバーは無事だったが56号車はフロントが大破。ガードレールも補修が必要なダメージを受け、長らくテルトル・ルージュから第2シケインまでスローゾーンが続くこととなった。
この間にもLMP2やGTEクラスのマシンのコースアウトが相次ぎ、17時間過ぎにはマシュー・バキシビエールがドライブする36号車アルピーヌA480・ギブソン(アルピーヌ・エルフ・チーム)がポルシェカーブでクラッシュ。幸い自走でピットに戻ることができガレージでの修復後にコースに復帰したが、総合29番手/クラス5番手まで順位を落としてしまった。なお、トヨタは56号車のクラッシュ直後に7号車を前に出し、対8号車のラップダウンを解消している。
チェッカーまで残り6時間となったル・マン24時間。現在のトップは8号車トヨタ、総合2番手に僚友7号車が続き、3番手には首位から4周遅れとなっている709号車グリッケンハウス007 LMH(グリッケンハウス・レーシング)が続いている。
LMP2クラスは、序盤に首位に立った38号車オレカ07・ギブソン(JOTA)が安定したペースを刻み続けクラス首位をキープ中だ。9号車オレカ07(プレマ・オーレン・チーム)がクラス2番手。同3番手にはJOTAの28号車が続いている。
今年が“最後のル・マン”となるLMGTEプロは波乱の展開に。15時間半過ぎに首位を走行中だった92号車ポルシェの右フロントタイヤがバースト。フロント部を大きく壊した状態でピットに戻り、順位を落とすこととなった。
ポルシェの離脱後は64号車コルベットがふたたびトップに浮上する。レース残り時間6時間が近づくと51号車フェラーリがこれに接近しトップ争いが再開される。そんななかスタートから18時間にあと15分と迫ったところでフェラーリが逆転に成功する。
その直後、コース上でフェラーリを再逆転しようとするコルベットに悲劇が待っていた。ユノディエールで51号車の背後につけていた64号車は、LMP2の83号車オレカ07(AFコルセ)にサイドから当てられるかたちでヒットされ、アウト側のガードレールに弾き飛ばされてしまう。コルベットは1度目の衝撃の後、コースを横断し再度ガードレールに激突して止まった。このクラッシュによるマシンの損傷は大きく、コルベット・レーシングは63号車に続き64号車のリタイアを決めている。
この結果、同クラスでは51号車がトップに立っており、レース序盤に後れを取った91号車ポルシェが15秒差の2番手に。そこから約4分遅れてAFコルセの52号車が続いている。
LMGTEアマクラスは長らく79号車ポルシェ911 RSR-19がリードし続けていたが、18時間経過時点では33号車アストンマーティン・バンテージAMR(TFスポーツ)が首位に立ち、同じくアストンマーティンの98号車(ノースウエストAMR)が約3分差のクラス2番手につけている。3番手は77号車ポルシェ911 RSR-19(デンプシー・プロトン・レーシング)で、79号車は4番手に後退した。
同クラスにエントリーしている日本勢は、木村武史組57号車フェラーリ488 GTEエボ(ケッセル・レーシング)はクラス14番手を走行中。一方、既報のとおり星野敏と藤井誠暢が乗り込む777号車アストンマーティン・バンテージAMR(Dステーション・レーシング)は、シャシーのメンバーにダメージが見つかったためリタイアとなっている。