直列6気筒でこそ、本当のM3?実はBMW M3 CSL(E46)にはV8もあったのだ。このBMW M3 CSLのボンネットには、M5 E39のV8が搭載されている!
多くのファンにとって、「BMW M3 CSL(E46)」は史上最高の「M3」だ。2003年から2004年にかけて、ミュンヘンの会社は1,400台弱の特別モデルを製造し、そのうちの何台かは現在10万ユーロ(約1,400万円)以上の価格で取引されている。直列6気筒にカーボンエアボックス、バケットシート、セミスリック(要望に応じてノーマルタイヤも用意)、カーボンルーフなど、「CSL」の構成要素は絶妙である。しかし、これまでほとんど知られていなかったことだが、BMWはV8を搭載したM3 CSLも製造していたのだ。そのプロトタイプは現在も存在し、さらに走行可能な状態でもある。
先日公開されたYouTubeの動画では、今まで知る人が少なかったであろう「E46」世代の特別な「M3 CSL」が紹介されている。映像はBMW Mガレージで撮影されたものだ。スチールグレーと思われる「M3 CSL」がロールアップされるところから始まり、一見するとノーマルに見える。
しかし、BMWファンはその音を聞いて、首をかしげるだろう。それは、直列6気筒の嗄れた音ではなく、この「E46」は低音で鳴り響くサウンドを奏でるのだ!
M3 CSLにV8を搭載
さらによく見ると、フロントエプロンに手作業で組み込まれた丸い2つ目のエアインテークがあることに気づく。助手席側に設けられた、この追加の吸気口は、むろん、ボンネット内のV8に冷却風を供給するためのものだ。
ちょっと待って。V8?読んで字のごとくだ。このワンオフモデルは、CSLで360馬力と370Nmを発生する、今や伝説となった「S54」という略称の直列6気筒ではなく、「BMW M5(E39)」の5.0リッターV8を搭載しているのだ。「S62」と名付けられたこのV8は、「3シリーズ」のエンジンルームにちょうど収まるサイズで、430馬力と、「M5」や「Z8」の400馬力バージョンよりも、さらにパワフルなものだ。
完全に公道走行可能な、このプロトタイプが、楽しいものであることは明らかだ。BMW Mのプロトタイプ部門の責任者であるハンス ラーンも、そのことを認めている。また、「CSLのアイデアをさらに一歩進めて、何か付加できないかと考えた」と、テスト車両の背景を説明する。そして、「あれは無茶な試みだった!」と笑う。
見た目はほぼ標準的
大きなエンジンのために、標準の「CSL」のわずか1,385キロの乾燥重量は少し上昇したかもしれないが、余分なパワーはそれを補うはずだ。「M5」や「Z8」とは異なり、このプロトタイプの「S62」は、「M3 CSL」の「SMG-II」ギアボックスと組み合わされる。それ以外は、「CSL」を標準装備のままとした。
直列6気筒かV8か? それは確かに好みの問題だ。しかし、ひとつだけ確かなことがある。この「M3 CSL」は、「CSL」の名称復活を機に、約20年ぶりに一般公開された壮大なプロトタイプである。そして何より素晴らしいのは、BMW Mの宝庫には、さらに未公開のテスト車両があるということだ!たとえば、「BMW M5 CSL」。
Text: Jan Götze
Photo: BMW AG