7月12日、NTTインディカー・シリーズに参戦するチップ・ガナッシ・レーシングは、2021年チャンピオンであるアレックス・パロウが2023年まで契約を延長するオプションを行使し、来季もチームに残留すると発表したが、わずか3時間ほど後に、マクラーレンF1のテストドライバー就任が発表され、本人は自身のTwitter(@AlexPalou)でチップ・ガナッシとの契約延長を否定する異常な事態となっている。
スペイン出身のパロウは2015〜16年にGP3を戦ったが、資金面でヨーロッパでのステップアップは叶わず。ダラーラの仲介もあり、2017年にその年から全日本F3に参戦を開始したThreeBond with Drago corseに加わり来日するとランキング3位に。2018年はヨーロピアンF3に参戦したが、2019年に日本に戻ると、TCS NAKAJIMA RACINGから全日本スーパーフォーミュラ選手権、McLaren Customer Racing JapanからスーパーGT GT300クラスに参戦。スーパーフォーミュラでは1勝を飾りランキング3位、スーパーGTでも表彰台、ポールポジションを獲得する活躍をみせている。
そんなパロウは、日本で戦っている頃からインディカー参戦を目標としており、スーパーGTで関係を築いたチーム・ゴウの支援もあり2020年からはインディカー・シリーズに挑戦。デイル・コイン・レーシング・ウィズ・チームゴウで印象的なスピードをみせると、2021年にチップ・ガナッシに移籍。3勝を飾りスペイン人初のインディカーチャンピオンとなった。
2022年もパロウはチップ・ガナッシからインディカー・シリーズを戦っていたが、7月12日、チップ・ガナッシは2023年も契約延長のオプションを行使し、パロウがインディカーを戦うと発表した。チーム代表のチップ・ガナッシは「彼は実績あるチャンピオンであり、世界で最も手強いドライバーのひとりだ。一緒に仕事を続けられることをうれしく思う」とコメントしている。
またパロウのコメントとして、「来シーズン、チップ・ガナッシ・レーシングとともに戦うことを知り素晴らしい気持ちだ。チームは初日から自分を歓迎してくれ、チップ、マイク・ハル(マネージングディレクター)、NTTデータカラーの10号車を走らせる人々と協力し続けることをうれしく思う。目標は今までと同じで、その達成のために絶えず努力し続ける」と掲載した。
■「プレスリリースのコメントは僕が言ったものじゃない」パロウは契約延長を否定
しかしその3時間後、マクラーレンF1はパロウがチームに加わり、「2022年シーズン終了後にマクラーレンに加わり、パロウの2023年のレースでのミッションのかたわら、パトリシオ・オワードとコルトン・ハータとともにMCL35Mのテストを行う」と発表した。さらに、パロウ自身がSNSに連続投稿。チップ・ガナッシとの契約を延長していないとする旨を発信した。
「午後、メディアから僕の承認なしにチップ・ガナッシ・レーシングが、僕が2023年もチップ・ガナッシでドライブするというプレスリリースを発行したと聞いた。さらに驚くべきことに、チップ・ガナッシのリリースの中に入っているコメントは、自分が言ったものじゃない」とパロウ。
「僕はプレスリリースを承認していないし、僕のコメントも自身が作成、もしくは承認したものじゃない。僕はこの件に関してチームに通知したし、個人的な理由で、2022年以降はチームとの関係を継続しない」
「今夜の不幸な出来事はさておき、僕はチップ・ガナッシ・レーシングに大きな敬意を示し、今シーズンをともに力強く終えることを楽しみにしている」
パロウとチップ・ガナッシ・レーシングとの契約が今後どういった帰結を迎えるのか、F1、そしてアロウ・マクラーレンとしてインディカーで戦うマクラーレンとの関係がどうなるのか。マクラーレンは詳細は後日発表としており、今後予断を許さない状況となりそうだ。