5月20~22日の週末に予定されていた第2戦イスタンブール・パークが土壇場で延期され、スライドの第2戦として6月10~12日に開催されたETRCハンガロリンク戦は、今季デビューを飾った新生クプラEKSのエイドリアン・タンベイ(クプラe-Racer)が、僚友兼チーム代表のマティアス・エクストローム(クプラe-Racer)や、同じく今季初参戦のマキシム・マルタン(アルファロメオ・ジュリアETCR)らを降してシリーズ初優勝。奇しくもDTMドイツ・ツーリングカー選手権経験者らが上位を独占する結果となった。
創設2年目の今季より、シリーズ名称を『PURE ETCR(ピュアETCR)』改め『FIA eツーリングカー・ワールドカップ』へと改称したTCR規定派生の電動ツーリングカー選手権は、第2戦レースウイークの金曜になり突如の短いリリースを発行。シリーズプロモーターのディスカバー・スポーツ・イベントは「イスタンブール・パークでは、この日のレース開催に間に合うような、大会前の要件が満たされていない」とし、イベントが計画どおりに行われないことを明らかにしていた。
現状、同地でのレースは11月の新しい日付にリスケジュールされるよう設定されているが、その結果シリーズの第2戦は本来第3戦としてカレンダーに組み込まれていたハンガリーにて、WTCR世界ツーリングカー・カップとETRCヨーロピアン・トラック・レーシング・チャンピオンシップ併催戦として実施されることとなった。
3マニュファクチャラー、12名のドライバーがふたつのプールに分かれて争う同シリーズだが、今季のクプラ陣営は自身が率いるEKSとのジョイントで、王者エクストロームとジョルディ・ジェネに加え、トム・ブロンクビストやタンベイが新たに加入。同じくヒョンデ・モータースポーツNは、ジャン-カール・ベルネイを筆頭に新加入のミケル・アズコナや2019年WTCR王者ノルベルト・ミケリスらがヒョンデ・ヴェロスターN ETCRを走らせる。
そしてアルファロメオ・ジュリアETCRを投入するロメオ・フェラーリは、ベルギー出身のマルタンに元チャンピオンのブルーノ・シュペングラーなどDTM経験者を招聘。シリーズのドライバーレベルが大きく引き上げられる形となった。
こうして始まったハンガロリンクでの第2戦は、オープニングセッションから『プールFast』『プールFurious』ともにクプラ陣営が優位に立ち、500kWが解放される予選ではエクストロームとタンベイがそれぞれポールポジションを獲得。300kWとなる準々決勝では、アルファのマルタンやヒョンデのベルネイらが喰い下がる展開となる。
■ファイナルではクプラがワン・ツーを決める
併催ETRCのアクシデントで準決勝が土曜夜から日曜朝に延期される波乱もありつつ、猛暑となったスーパーファイナルは『プールFast』が最初にレースを戦い、マルタンとその僚友である“オールドルーキー”のジョバンニ・ヴェンチュリーニがスターティングゲートからの飛び出しで主導権を奪う。
その背後から追走したエクストロームは300kWから一時的な電気ブーストが利用可能になる“パワーアップ・トゥ・パス”を使用して2周目にヴェンチュリーニを捉えるも、5周勝負では首位マルタンに届かず。ここでディフェンディングチャンピオンの週末制覇は最終ヒートの結果次第に。
続いて夕刻に始まった『プールFurious』のスーパーファイナルは、首位シュペングラーのアルファを早々のターン2で仕留めたクプラのタンベイが早々にリードを奪っていく。さらに背後では僚友ブロンクビストが気を吐き、パワーアップの割り当てを完璧に使用してフィールドを駆け回り、ベルネイ、シュペングラーを次々にオーバーテイクして2番手へと躍進する。
この結果、最終セッションはクプラがワン・ツーを決め、週末に90点を獲得したタンベイが初の“キング・オブ・ザ・ウイークエンド”を獲得。80点のエクストロームが2位に続き、そのわずか2点差でマルタンが並ぶトップ3となった。
「ファイナルはアメージングな展開になったね。昨日のミスを考えれば、今朝は相手との差を詰めるところから始めなければならなかった。チームに良い結果をもたらす必要があったし、僕も自分自身にプレッシャーをかけたよ」と振り返ったタンベイ。
「ここハンガロリンクで僕らのクルマは本当に速いと理解していたし、トラブルのないレースを心掛けながらも、力強い動きでブルーノ(・シュペングラー)をパスしなければ、と考えていた。その機会はふたつ目のコーナーでやってきたし、良い計画……プランAの方が機能してくれた。とてもうれしいし、この勢いのまま週明けにはクプラのホームレースに全力で挑むつもりだ」
そうタンベイが語るとおり、FIA ETCRの実質第3戦はバック・トゥ・バックの連戦として、スペインのハラマでこの週末6月17~19日に争われる。