米国のスタートアップ企業Our Next Energy(ONE)が開発した奇跡のバッテリーにより、BMW iXの航続距離は最大1,200キロにまで伸長する可能性がある。BMWが採用を決定したこの技術は、電気自動車のSUVで広範囲にテストされる予定だ。
このバッテリーは、新型電動SUVの「BMW iX」を、本当に長距離走行可能ならしめることができるかもしれない。アメリカのミシガン州の新興企業「Our Next Energy(ONE)」は、最大1,200km(!)の航続距離を約束している。BMWは、2021年に発売された「iX」は、現在最大のバッテリーを搭載すれば、最大630kmの走行が可能だとしているが、我々の実用試験での計測では434kmという実質航続距離だった。しかし、この新しい技術によって、「iX」の航続距離は約3倍になるのだ!
ONEバッテリーによって、テスラの航続距離はこれだけ伸びた
電池の専門家であるOur Next Energy社が、冗談を言っているのではないということは、テスラでの実験&実証走行で明らかになっている。2021年末、彼らはバッテリーのプロトタイプ「Gemini 001」を、「テスラ モデルS」に仕込んだ。その結果、電動セダンは電力不足になる前に、752マイルを走行することができた。これはテスラの純正バッテリーに比べて、2倍以上の約1,210kmに相当する。
この記録を達成するために、電池メーカーがアクセルを慎重に踏んで走った結果、平均速度は90km/hしか出なかったという。しかし、航続距離記録達成のためのテストは、2021年12月中旬、冬型の気温で氷結したアメリカ中西部で、つまりはバッテリーにとっては厳しい条件下で実施された。ジェミニ(Gemini)のバッテリーは、203.7キロワットで、テスラのバッテリーのほぼ2倍の容量があるということになる。
「BMW iX」に搭載されている最大のバッテリーも、この半分弱の約105kWhの容量を持っている。2022年の末には、BMWがONE社の奇跡のバッテリーをプロトタイプに搭載し、大規模なテストを実施する予定だ。
新技術のメリット: 内燃機関より航続距離が短いというデメリットが解消される。
「Gemini 001」のエネルギー貯蔵は2つに分かれている。最大150マイル(約240km)までの通常の走行では、バッテリーの一部が供給される。1,200kmまでの長距離走行では、電池の化学的性質が異なる別の大きなセグメントを事実上オンにすることになる。
さらに、リチウム、グラファイト、ニッケル、コバルトといった貴重な原材料の使用量を大幅に削減し、環境保護とコスト削減を実現する。その他、寿命や充電速度など重要な点については、まだ情報がない。
BMWはすでに電池のスタートアップに多額の投資を行っている
BMWがこの電池導入に向けて慎重に検討していることは明らかだ。同社は3月に約6,200万ユーロ(約90億円)を投資している。BMWの取締役であるユルゲン ヒルディンガーは、「ONEのバッテリー技術を、当社の将来のBEV製品群のモデルに統合する」ことを計画していると、今回発表した。今後、ONEが、テスラなどのメーカーに技術を提供することが許されるかどうかは不明だ。
Text: Roland Wildberg