今季ここまでノーポイントと苦戦を続けていた福住仁嶺(ThreeBond Drago CORSE)が、第5戦SUGOの予選ではQ2進出を果たした。
前戦オートポリス、特別規則書の解釈を誤ったチームは、タイヤ交換義務にカウントされる周回数より1周早く福住をピットに呼び戻してしまい、レース後に失格の裁定を受けていた。今季、1台体制のThreeBond Drago CORSEに移籍加入した福住は、「あってはならないミスだった」と振り返る。
「でも、チームが成長するために必要なことだったと思います。そこでしっかり学んでチーム全員が努力して、流れを変えられるようにできれば、と」
そのオートポリス戦の決勝を走るなかでは、「『このあたりが足りてないな』という部分を、予選よりも感じることができた」とセットアップに対するヒントも見つかっており、SUGOへの持ち込みセットをチーム全体で改めて考え直すきっかけにもなっていたという。
迎えたSUGOでは「フリー走行から、前回とは違うフィーリングがあった」と福住。フリー走行で見られたアンダーステア症状を改善すべくセット変更を施して臨んだ予選Q1では、アタック前に手応えを得ていた。
「予選が始まってユーズドタイヤで1周走っているときから、『今回、ちょっと行けそうだな』と感じていました」
Q1・Bグループを6番手で通過した福住は、Q2でもタイムをわずかに縮め、6番手に。「またひとつ、チームとしてレベルアップできた部分があるのかなと思うのと、素直にこの結果は嬉しいです」と予選シングルグリッドを喜んでいた。
■「迷っている時間はない」スーパーフォーミュラの難しさ
チームを率いる道上龍監督も「やっとスタートラインに立てた、という感じです」と安堵の表情を見せた。
「SUGOは1周も短いので、コンマ1秒の差が結果を左右する、ものすごいタイムが拮抗する予選になるだろうなと思っていました」
フリー走行ではトップからコンマ9秒おくれと若干タイム差は大きく、いくつか選択肢のあった予選に向けてのセット変更には迷いもあった、と道上監督。だが、前述のようにこのセット変更は成功する。
「Q1が終わって6番手ではあったけど、野尻(智紀)とはほとんどタイム差がなかったし、ものすごい接戦のなかに割って入れたという部分で、素直にQ1突破の時点で嬉しかったです」
このあと、福住はやや大きめのセット変更を提案したというが、エンジニアはあまり大きな変更を望んでいなかった、と道上監督は明かす。
「でもそこで仁嶺が『そこは大きく行っちゃってもいいと思います』と言ったことで、エンジニアも『じゃあ、それで行ってみよう』となりました」
Q1からQ2への、福住のタイムアップはおよそコンマ1秒。セット変更が奏功したのかは「分からない」と道上監督は言うが、それ以上に手応えを感じている部分があった。今季ここまで悩まされていた『ニュータイヤを履いてもグリップ感がない』という症状は、ここSUGOの予選では改善が見られたというのだ。これが続けば、コンスタントに上位に入る状況も見えてきそうだ。
「開幕戦からここまで、僕としてもすごくプレッシャーを感じていました」と道上監督。
「これを今回だけでなく、次も継続していかなければならない。常にトップ10に入れるような状況には持っていきたいと思っています」
「ただ、このカテゴリーは本当に練習走行の時間が少ない。もちろん走行時間を増やしたらコストはかかってしまうのですが、このわずか90分でマシンを煮詰めなければいけないというのは、(1台体制の)我々にとっては時間が足りません」
「スーパーフォーミュラは本当に時間がないので、『どうしよう、スプリング変えてみようかなぁ』などと考えている間に、時間を失ってしまう。そこは他のカテゴリーとは比べものになりません」
「だから、いろいろなことに瞬時に対応できるようなデータや準備が必要だと考えています」
まだまだやるべきことは山積しており、道上監督の言うように“スタートライン”ではあるのかもしれない。だが、チームは少ない走行時間の中からヒントを見つけ、着実に前進しているようだ。