TOYOTA GAZOO Racing WRCチャレンジプログラムに参加している勝田貴元は7月14~17日、東欧エストニアのタルトゥを中心に開催されたWRC世界ラリー選手権第7戦『ラリー・エストニア』に参戦し、総合5位でフィニッシュ。開幕から続く連続入賞ラウンド数を「7」に伸ばしている。
2020年に初めてWRCとして開催されたラリー・エストニアは、地理的に近いフィンランドのWRCイベントと同様に、非常に速度域の高いグラベル(未舗装路)ラリーだ。一方、ステージの路面は全体的にフィンランドよりも軟らかく、再走ステージでは深い轍(わだち)が刻まれドライビングを難しいものにする。
そんな今戦に、勝田はコドライバーのアーロン・ジョンストンとともにトヨタGRヤリス・ラリー1で出場。連日の局地的な降雨の影響でグリップレベルが目まぐるしく変化する非常に困難なコンディションとなったが、堅実な走りでラリーを戦い抜き総合5位入賞を果たした。
なお、勝田はWRCイベントではない大会を含め過去4回ラリー・エストニアに出場しているが、アクシデントなどにより一度も完走したことがなかった。昨年の大会では序盤に3番手につけながら、当時のコドライバーであるダニエル・バリットがジャンプの着地時に負傷したため、大事をとってリタイアを決断している。
5度目のチャレンジとなった今大会は、ラリー開幕日の14日(木)夜に行なわれたオープニングステージで7番手タイムを記録。翌15日(金)のデイ2は、トリッキーな路面コンディションで自信を持って走ることができず、確実性を重視したアプローチでステージを走行することに。それでも、終盤にかけてはペースを上げ、総合7番手につけた。
16日(土)のデイ3は、ステージ5番手タイムを2回記録するなど、さらにペースが良くなり順位を総合5番手に上げた。尻上がりの調子で迎えた競技最終日の17日(日)は、SS20と再走ステージのSS23で3番手タイムをマーク。SS20はドライ、SS23はウエットとコンディションは大きく異なっていたが、勝田は濡れて滑りやすくなった路面でも自信を持って攻めることができた。
さらに、ボーナスポイントの獲得が懸かる最終パワーステージ(SS24)では、滑りやすいフルウエット路面のなか5番手タイムを記録する。この結果、ラリー・エストニア初完走を果たした勝田は、総合5位入賞で獲得した10ポイントに加え、ボーナスの1ポイントを手にしている。
■勝田「有効になりえるセットアップを見つけることができたので、次戦がとても楽しみ」
「今回は路面コンディションが非常にトリッキーで、なおかつ変化が大きかったので、どうなるのか判断するのがとても難しいラリーでした」と今大会の戦いを振り返った勝田。
「そのような状況下で、ドライバーは迅速に適応しなければなりませんが、金曜日はそれができず自信を持つことができなかったので、とにかく賢く、問題が起こらないように乗り切ることを心がけて走りました。それでも、ラリーの終盤までにはかなり改善することができたと思います」
「土曜日の時点でもかなり良くなっていましたし、日曜日はクルマのフィーリングがとても良く感じられ、難しいコンディションであってもいいタイムが出ました」
「今後さらに改善すべき点を見つけなければなりませんが、次のラリー・フィンランドに向けて、セットアップやフィーリングの面で有効と思えるものを今回見つけることができたので、とても楽しみです」
WRCチャレンジプログラムのインストラクターを務めるユホ・ハンニネンは、勝田のドライビングがどんどん良くなっていった、と週末の改善を評価した。
「最終的にはポジティブな週末になった。リザルトは良かったし、貴元のドライビングもどんどん良くなっていった。彼は序盤苦戦してタイムを失ってしまったが、それでも今回もまた我慢強く走れたのは良かったと思う」とハンニネン。
一方、彼は勝田の走りにまだ改善できる部分があると言う。
「本当に難しいコンディションのラリーだったし、グリップレベルが何度も大きく変わるような状況が、彼にとってはもっとも大変だったと思う」
「まだまだ改善できる部分はあるし、次のラリー・フィンランドでも雨が降れば同じようなコンディションになる可能性があるため、どうすればもっと自信を持ってドライブできるようになるのかをこれから考える必要がある」
今大会を総合5位で終え、開幕戦モンテカルロからの連続入賞ラウンド数を7戦に伸ばした勝田。彼が臨む次のラウンドは、8月4日から7日にかけてフィンランドのユバスキュラを中心に開催される『ラリー・フィンランド』だ。
今戦と同じく超高速グラベル(未舗装路)イベントであるフィンランドは、現在フィンランドに住む勝田にとって第2のホームラリーといえる一戦となる。