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2022年全日本スーパーフォーミュラ選手権第5戦SUGO

サッシャ・フェネストラズが悲願の初優勝!
宮田莉朋が6位、凱旋レースの平川亮は16番手から追い上げ7位

 スーパーフォーミュラの第5戦がスポーツランドSUGOで行われ、2番手グリッドからスタートで首位を奪ったサッシャ・フェネストラズ(KONDO RACING)が悲願のキャリア初優勝。序盤2度のセーフティカーが出る荒れた展開の中、宮田莉朋(Kuo VANTELIN TEAM TOM’S)が6位、16番手グリッドから追い上げた平川亮(carenex TEAM IMPUL)が7位、国本雄資(KCMG)が9位フィニッシュを果たしました。

 2022年全日本スーパーフォーミュラ選手権の第5戦が6月18日(土)、19日(日)の両日、宮城県のスポーツランドSUGOで開催されました。前戦オートポリス大会から約1カ月。全7大会10レースで行われている2022年シーズンのスーパーフォーミュラも前半戦を折り返す5戦目を迎えました。ここまでの4戦では、平川が最多となる2勝と2位1回という好成績を挙げていますが、ライバルの野尻智紀(ホンダ)が安定した成績とポールポジションのポイントを活かし目下ランキングトップ。平川は7ポイント差でこれを追う形となっています。

 前週、ル・マン24時間レースで初優勝を飾った平川にとっては凱旋レース。同レース2位の小林可夢偉(KCMG)とともに、長く、タフなル・マンウィークから帰国して僅か1週間でのレースとなりますが、世界を制した平川の走りに注目が集まりました。

 週末を通して夏のような暑さの好天に恵まれたスポーツランドSUGOには多くのモータースポーツファンの皆さまが集まりました。コース内側のイベント広場では、SF NEXT50 VillageとしてJRP、ホンダ、トヨタと、スポーツランドSUGOの親会社であるヤマハとの合同ブースで展示を行いました。カーボンニュートラル燃料を使ったスーパーフォーミュラのテスト車両“赤寅”“白寅”と、世界最高峰の2輪レース、motoGP車両などを展示。また、18日(土)にはル・マンから戻ったばかりの平川、小林のトークショーも行われました。

■予選

 18日(土)は朝から好天に恵まれ、気温もうなぎ登り。午前中のフリー走行からかなりの暑さを感じるコンディションとなりました。ノックアウト方式の予選が行われた午後2時にはやや空は雲がかかったものの、気温28度、路面温度44度。

Q1は2組に分けて各10分間で実施され、それぞれ上位6台がQ2へと進出します。A組ではセッション開始と同時にまずほとんどの車両がユーズドタイヤでコースイン。しかし、カモシカと思われる野生動物がコース上に出たためにすぐに赤旗中断。セッションはすぐに残り10分の仕切り直しで再開されましたが、アタックに向け集中していたドライバーにとっては、リズムを狂わされる出来事となってしまいました。

 セッションが残り7分を切ると、各車タイヤを新品にしてアタックへ。中でも平川はかなり早めにアタックに入りましたが、まだタイヤを暖めるためにスロー走行していた車両に引っかかり、1分05秒751でこの時点でのトップにつけますが、その後アタックした車両がどんどんタイムを更新していきました。

 第2戦富士で4位フィニッシュを果たすなど復調の兆しを見せる山下健太(KONDO RACING)が1分05秒433で3番手に飛びこむと、宮田がこれを上回り、宮田が3番手、山下が4番手でQ2へと進出。出走した10台がコンマ7秒の中に入る激戦となるなか、平川は翌周もアタックを続けて僅かにタイムを更新しましたが、トップ6には0.088秒届かず8番手。阪口 晴南(P.MU/CERUMO・INGING)が9番手、小林が10番手でQ1敗退となりました。

B組はさらにコンディションが良くなったか、全体のタイムも上がり、さらに僅差の争いとなりました。まず坪井翔(P.MU/CERUMO・INGING)が1分5秒176と、A組のトップに迫るタイムをマークしましたが、各車さらにタイムアップ。フェネストラズは1分05秒057,そして国本が1分4秒台に突入しました。

 その国本も牧野任祐(ホンダ)にかわされ2番手に。フェネストラズも5番手に落ち、トップ6台が0.155秒内に入るという接近戦で、坪井は0.1秒及ばず無念の7番手。ジュリアーノ・アレジ(Kuo VANTELIN TEAM TOM’S)が8番手、関口雄飛(carenex TEAM IMPUL)が9番手、大嶋和也(docomo business ROOKIE)が10番手でQ2進出はなりませんでした。

 Q2(7分間)では、各車一旦コースへ出て戻って来たあと、残り4分ほどでアタックへ。フェネストラズがQ1のタイムを大きく上回る1分4秒706という好タイムを叩き出しましたが、野尻にかわされ、ポール獲得はならず。それでも最前列2番手グリッドを獲得しました。宮田は1分4秒832で2列目4番手。山下も1分4秒台に入れましたが7番手、国本は8番手から決勝レースをスタートすることとなりました。

スポーツランドSUGOでスーパーフォーミュラ初勝利を飾ったサッシャ・フェネストラズ(KONDO RACING)
スポーツランドSUGOでスーパーフォーミュラ初勝利を飾ったサッシャ・フェネストラズ(KONDO RACING)

■決勝

 19日(日)も朝から好天に恵まれ、気温、路面温度ともに暑さを感じる気候となりました。スタート進行が行われている中で突然大粒の雨が降り始め、一旦は路面を濡らしましたが、すぐに雨は止み、日差しが戻ったことで急速に路面は乾いていき、レーススタート時には完全なドライコンディション、午後2時30分、気温30度、路面温度43度で21台のSF19がスタートを切りました。

 最前列イン側2番手からスタートを切ったフェネストラズが抜群の反応でポールポジションの野尻に並びかけると、1コーナー進入で先行。一気に首位に立ちました。その後方でも激しい順位争いが繰り広げられる中で、7番手スタートの山下が1コーナー進入で後方から接触されてスピン。2コーナーイン側で止まって脱出できず、1周目にしてセーフティカーが導入されました。

 このスタートでは、16番手スタートの平川が見事なパッシングで4ポジションアップの12番手へ浮上しました。レースは7周を終えたところでセーフティカーが退去し、8周目に再スタート。首位のフェネストラズは好ダッシュで後続を引き離しましたが、後方車両がスピンを喫して1コーナーでクラッシュ。2度目のセーフティカーが導入されました。

 このセーフティカーラン中に義務づけられているピットインが可能となる10周目を過ぎたため、各車のピット戦略に注目が集まりましたが、首位のフェネストラズから上位勢も次々にピットイン。コース上に残ったのは宮田、平川、アレジ、関口、小林を含む7台。ピットインしたフェネストラズは8位で15周目に再スタートが切られました。

 首位に立ったもののゴールまでに一度はピットインしなくてはならない宮田は先頭の空力的な優位性を活かして猛プッシュ。8番手を走るフェネストラズ以降の車両よりもハイペースで差を広げていく作戦で、3番手の平川も後続との差を広げていきました。
首位で逃げる宮田と、フェネストラズとのタイム差は、29周を終えた時点で約20秒に。ピットインでのロスタイムを考えると逆転には35秒程度は必要であり、終盤戦に向けてさらなる追い上げなるかが注目点となりました。

 しかし、序盤に長いセーフティカー走行があったため、レースは規定の53周ではなく、最大時間の70分で終了することとなり、追い上げるための周回数は短縮されることに。
残り12分ほどとなった39周を終えたところで3番手走行中の平川がピットイン。14番手でコースに復帰しました。平川は交換した新品タイヤの優位性を活かして猛烈な追い上げを開始。45周目にはトップ10圏内に浮上しました。

宮田莉朋(Kuo VANTELIN TEAM TOM’S) 2022スーパーフォーミュラ第5戦SUGO
宮田莉朋(Kuo VANTELIN TEAM TOM’S) 2022スーパーフォーミュラ第5戦SUGO

 首位を行く宮田はフェネストラズとの差を27秒まで広げて、46周を終えたところでピットイン。宮田とともに最後までピットインを遅らせていた小林もピットへ向かい、フェネストラズが首位に復帰。宮田は6番手でコースに復帰しました。

 47周目に前を行く国本をかわした平川は、ファイナルラップに入った1コーナーでインにねじ込んでさらに1台パスし、7番手へとポジションアップ。レースは予定よりも4周短い49周でチェッカーとなり、フェネストラズが5秒以上の大差をつけてトップチェッカー。日本のF3でチャンピオンを獲得し、最高峰スーパーフォーミュラにステップアップして3年目の若手ドライバーが、悲願の初優勝を果たしました。

 粘り強い走りを見せた宮田が6位。平川は16番手からの追い上げで7位フィニッシュ。国本が9位に入り、ポイント獲得を果たしました。

■コメント

KONDO RACING 4号車 サッシャ・フェネストラズ

「3年目のシーズンで、この結果が出せたことにはとても満足しています。昨年は終盤の2戦しか出られず、一昨年2020年は多くのレースでトラブルなどに見舞われ、リタイアに終わっていました。ちょっと時間がかかりましたが、やっと勝つことができて本当にうれしいです」

「ご存じのとおり昨年はコンドーレーシングにとって本当に厳しい一年でしたが、ようやくトップ争いに加わることができるようになりました。残念ながら健太は今日接触でリタイアしてしまいましたが、チーム全体では強さを示せたと思いますし、今日は本当に良いレースができました」

「今日のレースでは、タイヤをマネージメントすることがもっとも重要だったと思います。10周目でピットインしたため、2度目のセーフティカーからの再スタート後はほとんど、前を塞がれる形で走らなくてはなりませんでした。交換したタイヤで残りの40周か41周走らなくてはならないため、タイヤをマネージメントし、摩耗を最小限に抑えるよう心掛けました」

「最後の15周くらいは無線も連絡しないように伝えて、走りに集中しました。自分自身うまくやれたと思いますし、ピットストップも戦略もすべてがうまく行き、チームにとても感謝しています。今後のレースもこの位置で戦えるように頑張ります」