電動化やEV化が進む中で、今年は魅力的な「純ガソリンエンジン+MT」のニューモデルが多数登場する年でもある。
1月の東京オートサロン2022ではトヨタやホンダがスポーツモデルを公開。日産フェアレディZやマツダロードスターが登場し、スバル WRX STIも近日登場予定だ。
しかし「純ガソリンエンジン+MT」に乗れる日もそう多くないはず。そこで過去に登場した車も踏まえながら死ぬまでに乗りたい「最後の純ガソリンエンジン+MT」を紹介していく。
※本稿は2022年2月のものに適宜修正を加えています
文/伊達軍曹
写真/ベストカー編集部
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■現代でも「純ガソリンエンジン+MT」に乗れるチャンスはある
クルマというものの電動化およびEVシフトが世界的な潮流となり、ついでに今後は自動運転または自動運転に近い何かが主流となっていくことは明確な今、「純ガソリンエンジン+MT」という属性の車を堪能できる時間は、さほど長くはないように思える。
とはいえ、今年はかなり魅力的な「純ガソリンエンジン+MT」のニューモデルが多数登場する年でもある。
トヨタは東京オートサロン2022(TAS)で発表した「GRMNヤリス」の商談申し込みを1月14日に開始し、同じくTASでホンダは「シビックタイプR」のプロトタイプを公開。こちらも今年秋には発売される見通しだ。
日産の新型フェアレディZは6月下旬にまず「Proto Spec」なる特別仕様車として国内に登場し、マツダはロードスターおよびロードスターRFのマイナーチェンジを2021年暮れに実施し990Sを発売した。さらに新型スバル WRX STIも近々に登場するだろうといわれている。
このように「純ガソリンエンジン+MT」のクルマは百花繚乱……とまでは言えないものの、いちおう「まだまだ乗れる! まだまだ買える!」という状況ではあるのだ。
とはいえ、ここを逃すと「もう次はないかも……?」とも思えるタイミングであることも、世界的な状況から考えると間違いないはず。
カーガイとしての人生に悔いを残さぬよう、ここまでに挙げたGRMNヤリスやシビックタイプR、新型フェアレディZ等々のガソリンMT車にはぜひともビシッと注目し、可能であれば、ぜひとも手に入れたいところだ。
そしてもちろん、これから発売されるモデルではなく「今フツーに販売されているモデル」のなかにも、純ガソリンエンジン+MTという機構を採用しているモデルはまだたくさん残っている。
■トヨタ 次の86は高確率で「電動パワーユニット+高効率AT」になる
純ガソリンエンジン+MT車がもっとも多い国産メーカーは、意外にもトヨタだ。2022年2月上旬現在、下記の10車種において「古式ゆかしい純ガソリンエンジン+MT」というパッケージを選ぶことができる。
●カローラ
●カローラスポーツ
●カローラツーリング
●カローラアクシオ
●カローラフィールダー
●GRヤリス
●ヤリス
●GR86
●C-HR
●コペンGRスポーツ
上記のどれもがそれなり以上にステキだが、旧世代にあたるカローラアクシオを、しかもその法人向けっぽい最廉価グレードである「EX」を、5MTで駆るというのはマニアックでステキな楽しみ方かもしれない。
とはいえ、それはあまりにもマニアックすぎるため、一般的に考えた場合の「死ぬまでに乗っておきたい純ガソリンエンジン+MTのトヨタ車」は、やはりGR86だろうか。
GR86が搭載する6速AT「6 Super ECT」も決して悪くないというか、個人的なことを言えばむしろ好みでもあるのだが、要はタイミングの問題である。
これから何十年間も「次々と新型のガソリンエンジン+MT車が登場する」という時代であるならば、今回のGR86で6 Super ECTを選ぶのも十分アリだろう。
だが、おそらく“次”はないのだ。次のGR86は、もちろんわからないが、かなりの確率で電動パワーユニット+高効率ATになるはず。だからこそ今、“古典”を味わっておきたいのである。
■マツダ 「最強最後の古典」を堪能できるロードスター特別仕様車「990S」
トヨタの次に「純ガソリンエンジン+MT」のラインナップが豊富なのはマツダだ。現在、下記6車種のそれを選ぶことができる。
●ロードスター
●ロードスターRF
●マツダ2
●マツダ3 ファストバック
●CX-3
●CX-30
これらのどれもが魅力的な選択肢なわけだが、強いて言うなら本命は「ロードスター」だろうか。
6EC-ATのロードスターが悪いとはまったく思わないが、せっかくこの古典純情派スポーツに乗るのであれば、トランスミッションも古典でいきたいと思うのが人情である。
特に、昨年12月に登場した車重990kgの特別仕様車「990S」であれば、「最強最後の古典」を存分に堪能できるだろう。
■ジムニー スイフト… 魅惑の選択肢が揃うスズキ
スズキは2020年2月上旬現在、マツダに次ぐ計5車種の「純ガソリンエンジン+MT」をラインナップしている(※商用車を除く)。
●スイフト
●スイフトスポーツ
●アルトワークス
●ジムニー
●ジムニーシエラ
どれも魅惑の選択肢であり、例えばジムニーとスイフトの使い方や魅力を同列に論じるのはナンセンスなわけだが、それでも強いて“本命”を挙げるとすれば、やはり「スイフトスポーツ」だろう。
最大トルク23.4kgmを2500~3500rpmで発生する1.4L直4ターボエンジンは、6速ATで操っても十分以上にファンで、なおかつ楽ちんでもある。
だがGR86と同様の理由で、つまり「次のスイスポは純ガソリンエンジン+MTではなくなるかもしれない」という理由により、このタイミングにおいては6MTのスイスポを選ぶのが、守旧派あるいは追憶派のカーガイ的には正解となるのだ。
■ホンダ N-ONEは普段づかいの新車として世界屈指
ホンダは、今現在「シビック」と「N-ONE」に純ガソリンエンジン+MTのモデルをラインナップしている。
シビックに関しては、「1.5L直噴VTECターボエンジンはCVTとのマッチングがなかなかよろしい」と評価するジャーナリストも多いようだ。
筆者もその意見に対して特に否定はしない。だが「新型シビックに乗るなら6MTに限る!」とは思っている。
全体的に素晴らしい出来映えの新型シビックではあるのだが、1.5L直噴VTECターボエンジン単体はさほど気持ちの良いものでもパワフルなものでもない(と筆者は感じている)。
それゆえ、CVTだと「まぁ悪くないクルマですね……」といったニュアンスの印象になりがちなのだが、6MTを選べば、車全体の印象が3割増し、いや5割増し以上になる。
新型シビックを「便利なファミリーカー」としてのみとらえている人はCVTでもいいのだろう。だがこの時代にわざわざ300万円以上出してシビックを選ぶ人が、まさか「便利ならばそれでいい」とは考えていまい。
必ずや「便利な5ドアハッチバックであると同時に、運転が楽しめる車でもあってほしい」と考えているはず。であるならば、選ぶべきは間違いなく6MTだ。
もうひとつの純ガソリンMT車であるN-ONE RSの6MTについては「最高!」とだけ申し上げておこう。
いわゆるホットハッチが好きだった人が今、近所までの普段づかいのために買う新車としては世界屈指の一台だと言える。
とはいえ……ここまでに挙げた現行世代の純ガソリンエンジン+MT車は、むちゃくちゃ正直なところを言えば「ATやCVTであってもそれなり以上に満足できてしまうクルマ」だ。
その理由は、昔のそれと違ってATやCVTのダイレクト感も大幅に向上しており、それと同時にエンジンの尖り具合も昔のクルマほどではないため(良くも悪くも“丸くなった”といえる)、「MTじゃなくちゃ楽しめない!」ということもなくなっているからだ。
■中古車で純ガソリン車+MT車を選ぶとどうなる?
……となれば、純ガソリンエンジン+MTの魅力を真に味わうためには、現行新車ではなく「旧世代の中古車」を選ぶのが正解である可能性は高い。
そしてその際にぜひ選びたいのが……これまたたくさんあって迷ってしまうのだが、まず筆頭に挙げたいのはDC2/DB8こと初代ホンダインテグラタイプRだろうか。
B18C型をベースにチューンされた1.8L直4純ガソリンエンジン「B18C Spec-R」は、最高出力200psを8000rpmで発生する超高回転型。
それをクロスレシオの5MTでダイレクトに操る快感は、2022年に発売されているどんな新世代高性能電動AT車よりも素晴らしい――と言い切っても決して間違いではない。ガソリンエンジンだからこその魅力、MT車だからこその面白さが全身に詰まった一台といえるだろう。
現在の中古車相場は、最高値圏は600万~900万円まで高騰してしまっているが、車両価格300万円前後でも十分悪くない個体を見つけることが可能。それでも高いは高いわけだが、もしも「人類遺産」として考えるならば、比較的お手頃と見ることもできる。
また同じホンダでは「S2000」もほとんど人類遺産である。
今さら詳しい説明は不要だろうが、S2000は、本田技研工業の創立50周年を記念して1999年に発売されたFRレイアウトの2シーターオープンスポーツ。
多くの部品が専用パーツとして新たに設計され、縦置きされるエンジンはリッターあたり125psというレーシングエンジン並みの出力をマークする、専用の2L、直4DOHC VTEC「F20C」。
これは市販量産車用エンジンであるにもかかわらずレブリミットが9000rpmという、鬼のような超高回転型だった。
そしてそのエンジンを構成する各部品にも、小型軽量化をしながらも強度を保つため、ほとんど「ワンオフ」とも言えるさまざまな新技術が投入されたのだ。
さらに、当時は希少だった6速MTも、S2000のために自社開発された専用品。……電動パワーユニット+ATのクルマだらけになった今となっては、これぞまさに人類遺産のひとつである。
そんなS2000の中古車相場は、最高値の後期型は900万円を超えてしまう状況だが、400万円台でもまずまずな個体を見つけることは可能。これまた高いは高いわけだが、もしも「人類遺産」として考えるならば(以下略)。
とはいえインテグラタイプRもS2000も、公道で全開をカマすにはあまりにハイパワーであり、「本当の意味で全開にできるのは高速道路の料金所ダッシュだけ」という状況もあり得る。
だが軽最速の純ガソリンエンジン+MT車である「スズキ アルトワークス」であれば、かなり極端な話ではあるものの、いついかなるときも“全開の歓び”を味わうことができる。
歴代アルトワークスのなかでぜひ選びたいのは――諸説あるとは思うが、やはり3代目(1994~1998年)だろうか。
この世代は、新開発のオールアルミ製DOHC 12バルブターボを搭載するRS/Z系と、扱いやすいSOHC6バルブターボを搭載したie/s系に大きく分けられるが、当然ながらここで推奨されるのはRS/Z系である。
その中古車相場は現在30万~80万円といったところ。全体をビシッと整備し直す予算までを勘定に入れたとしても、ある意味激安だと言える。
ただ、競技用ベース車両である「ワークスR」の中古車は非常に希少で、相場も200万円以上。よほどの思い入れや事情がある人以外は普通のRS/Z系を購入したうえで、ビシッと整備し、人類遺産として大切に扱いながら全開でカッ飛ぶのが正解となるだろう。
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