NTTインディカー・シリーズは後半戦に入り、第10戦トロントから4週間で5レースという超連戦。コロナ禍で大きくスケジュールが変更された2020年から、この流れが必要に迫られて生まれたが、なかなかの強行スケジュールが続いている。来年以降もこのインディカーのNASCAR化?は、進むかもしれない。
ここで問われるのはチームの体力だ。レースの遠征が続き、大きなチームは物量、人員ともに足りているだろうが、小さなチームはクルーがいくつも仕事を兼ねることになり、時間、体力共に負荷は大きくなる。
佐藤琢磨の所属するデイル・コイン・レーシング・ウィズ・リック・ウェア・レーシングも決して大きなチームではなく、この連戦は大変かもしれないが、なんとか乗り越えてもらいたいところ。
そのクルーのモチベーションに繋がるのは、レースでの好結果に他ならない。カーナンバー51が上位でチェッカーを受ければ、好循環も生まれるだろう。
チームのまとめ役とも言える琢磨もこの事は十二分に承知しているだろうし、まさかのオープニングラップでリタイアとなったトロントでは、さすがに落胆の表情は隠せなかった。このアイオワで捲土重来を期しているのは疑いようがない。
アイオワは2年ぶりの開催だが、過去にはポールポジション(2011年)も、3位表彰台(2018年)にも乗ったこともある。流れを変えられる舞台のひとつだ。
今年のレースはダブルヘッダーで開催され、土曜午前に予選を行い、土曜午後に第11戦(250周)、日曜午後に第12戦(300周)を行う。
金曜日のプラクティスを15番手と無難に終えていた琢磨だが、プラクティス後に足回りにセッティングのミスが見つかった。ワークシートと違う設定になっていたと言うが、これで土曜日の予選はデータを元に修正したマシンでアテンプトに出ることになった。
その修正したセッティングがうまく行ったのか、8番目にアテンプトに出た琢磨は1周目176.564mph、2周目177.278mphのタイムをマークして、第1レースを9番手、第2レースを5番手からスタートすることになった。
気温が35度にも届きそうな午後3時過ぎ、第1レースとなる第11戦がスタート。先頭のペンスキー勢、ジョゼフ・ニューガーデン、ウィル・パワーらは順調にスタートを切ったが、9番手の琢磨はグリーンになるやいなや、波に飲み込まれるようにポジションを落として行った。
「マシンのダウンフォースが足りなくて、アクセルを踏めなかった」という琢磨はあっという間に15番手までポジションを落とした。
17周目にジミー・ジョンソンのスピンでイエローコーションとなったが、チームは琢磨をステイアウトさせた。上位の中でも、コルトン・ハータやスコット・ディクソンはピットに入りタイヤを替える作戦を取っていた。
22周目にグリーンでレースが再開すると、琢磨は後続やピットインして追い上げてくるマシンに次々と抜かれ、30周を前に23番手まで落ちてしまった。
「最初のイエローでピットに入ってタイヤとウイングだけでも変えたかったけど、チームはステイアウトと。でもマシンは何をしても良くならなくて落ちるばかりでした」と琢磨は残念がる。
ほぼ最後尾となった琢磨は、周回遅れにもされ、淡々と走るばかり。前方のマシンのクラッシュやトラブルで多少ポジションは上がるものの、追い上げて行く勢いはなかった。イエローコーションになるとスタイアウトして周回を戻し、コースに出る繰り返しだった。
170周を過ぎ、琢磨は同じく不調でペースのままならないシモン・パジェノーとのバトル中に接触し、フロントウイングにダメージを負ってしまう。182周目にその交換のためにピットイン。
フロントウイングとタイヤを変えてコースに戻ると、今度は序盤からの不調が嘘のように見違えるペースで走り始めた。188周目にはベストラップも更新して上位と変わらないペースで走っていたが、すでに5周のラップダウンとなっていた琢磨は、順位を大きくゲインすることもなく、21位で250周目のチェッカーを受けた。
「予選では周回も少ないし修正も効いてしまうのでわからなかったですが、最初からこのフロントウイングがおかしかったんだと思います。ダウンフォースが足りなくてルーズになってしまうし、コーナーの出口でアクセルも踏めなくて、どうしようもなかったですね」
「接触でフロントウイングを変えた後はピタッとマシンも決まって、他のマシンとバトルもできました。それでもトップのニューガーデンとかは速かったですけど。もし今日フロントウイングを変えてなかったら、これが見つからなかったかもしれないし、そういう意味では明日に向けて良かったのかも知れません」
「明日のレースは今日のレースを参考にセッティングも変えられますし、5番手からのスタートですから、もっと良いレースができると思います‥‥」
アイオワの第1レースは辛酸を舐めたレースだったが、不調の原因が一つ見つかったことで、第2レースは間違いなくスピードアップしたレースを見せてくれるだろう。