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 ACOフランス西部自動車クラブ会長のピエール・フィヨンによると、2025年から次世代のLMP2マシンを管理するために使用される“アジャストメント・オブ・パフォーマンス(AoP)”のプロセスは、すべてのコンストラクターに「同じ勝利のチャンス」を与えるように設計されているという。

 ACOとFIAは現在市場を席巻しているオレカに加え、リジェ、ダラーラ、マルチマチックの各LMP2モデルのパフォーマンスをモニターするため、次世代のLMP2レギュレーションでは最大で年2回のAoP変更を実施すると、2022年のル・マンで発表した。

 フィヨンによれば、LMP2クラスにおけるAoPのアイデアは、2016年の導入以来LMP3規定で採用されている同名のシステムに由来しているという。

 次世代LMP2マシンのAoPがどのように運用されるのか、シーズン途中での調整が認められるかなど、具体的な内容はまだ決定されていない。

 ACOが性能に応じた変更を行う規定は現行のLMP2技術規則にも存在しているが、AoPはより厳格な枠組みとなるようだ。

「AoPの目的は、すでに現在のLMP3に存在しているものであり、真新しいものではない」とフィヨンは説明している。

「それは、全員にとって車両(の性能)を同じにするための枠組みだ」

「通常、LMP2車両(の性能)は非常に接近している。我々はコンマ何秒の話をしているのであって、秒単位の話ではない。もし車両間のギャップが小さいのであれば、すべてのブランドがレースに勝てるようにしたい、と我々は思う」

「我々は年に2回の調整を行う予定だ。ただし、それは車両のパフォーマンス調整であって、BoPではない。我々はおそらく、パワーだけを調整することになる」

「これは、LMP3でも同様だ。長期的な視点では、全員が同じように勝てるようにしたい」

 ACOでコンペティション・ディレクターを務めるティエリー・ブーべは、2018年に導入された“ジョーカー”と呼ばれる車両アップグレードに比べ、パフォーマンスを管理するための費用対効果はAoPの方が優れている、と指摘している。

 リジェ、ダラーラ、マルチマチックにこのジョーカーの権利が与えられたが、オレカ07がベンチマークとしての存在を維持し、かつLMP2マシンとして選ばれることに対して、ほとんど影響を与えることはなかった。

「これまでのジョーカーから、よりコスト効率が良いものへと転換するためだ」とブーべ。

「なぜなら、次世代LMP2にとっては、コスト効率が重要だからだ」

「ひとつのイベントだけを見て定期的にBoPを変更するのではなく、多くのレースからデータを収集し、より多くのデータを用いて、そこに差があるようならクルマのバランスを取る、といった形になる」

 オレカの創設者兼プレジデントであるユーグ・ド・ショナックは、LMP2でAoPがどのように機能するかを定義するためにはさらなる議論が必要としながらも、市場を広げるために導入されるこのアイデアに対しては、とくに反対はしていない。

 オレカは2017年に始まり、2024年末に終了する現在のLMP2レギュレーションの期間中、世界中で支配的なマニュファクチャラーとなった。

 オレカ07は2017年から2022年まで、ル・マン24時間レースのグリッドの74%のエントリーに使用されている。初年度は56%だったシェアは、今年ついに96%にまで上昇した。2022年のル・マンLMP2クラスで、オレカではない車両は1台のみだったのだ。

2022年のル・マン24時間LMP2クラスに、唯一オレカ以外のシャシーでエントリーしたCDスポーツのリジェJS P217・ギブソン
2022年のル・マン24時間LMP2クラスに、唯一オレカ以外のシャシーでエントリーしたCDスポーツのリジェJS P217・ギブソン

 さらにル・マンを前にした6月上旬、クール・レーシングは100台目となるオレカ07を受け取っており、オレカが他のLMP2ビルダーの生産量をはるかに上回っているという事実が浮き彫りとなった。

「現在は(ほぼ)オレカの車両しか、そこにはない。彼らはバランスを取りたいのだろう」とド・ショナックは述べている。

「ACOが見出した年に2回行うというやり方は、おそらく良いアイデアだろう。だから、これは(前向きに)議論されることになるだろう」

 AoPを支持しているかと尋ねられたド・ショナックは、こう答えている。

「ひとりのモータースポーツファンとして、私はBoPやAoPといったものは好きではない。だが、そこに他の選択肢がないのであれば、OKだ」

■「“リセット”はいい機会。F1と同じ」とダラーラ

 ダラーラのCEOであるアンドレア・ポントレモリは、AoPプロセスの導入により、LMP2の枠組みが「リセットされる」という考え方に、賛同の声を上げている。

 ダラーラP217はダラーラの現行LMP2プロトタイプではあるが、現在のところ主要な選手権にフル参戦はしていない。

 ダラーラはLMDhにおいてはキャデラック、そしてBMWのシャシーパートナーであり、そのベース車両を次世代LMP2マシンのコアとなる構造として使用する予定にしている。

「(2017年のレギュレーションでは)ジョーカーが、我々がやりたいと思うものではなかった」とポントレモリは述べている。

「だから結局、我々は元のポジションのままだった。我々にとっては、現在の状況は正しいものではない。そこには支配的なプレイヤー(オレカ)がいる。ワンメイクシリーズなんだ」

「逆に言えば、これはすべてをリセットするいい機会でもある。(2025年の)マシンはまったく違うものであり、LMDhのスパイン(背骨、骨格)をベースとしている。完全に新しく、過去とはまったく異なるものになる」

「後方に位置する人々にとっては、“リセット”はいつでも良いものとなる」

「F1でもそうだった。彼らがルールを変えたことで、レースごとのライバルが増えた。このようなことは、我々にとって良いことだ」

ダラーラの現行LMP2規定マシン、P217
ダラーラの現行LMP2規定マシン、P217