さらばナナハン! 現行モデル最後の750cc直4であるGSX-S750が生産終了となる。ナナハンと言えば、日本で伝統の排気量だけに悲しい限りだが、ホンダが近々投入予定の新型「ホーネット」がナナハンで復活するという。
「ゆくナナハン、くるナナハン」を追った!
文/ベストカーWeb編集部、写真/SUZUKI、HONDA
【画像ギャラリー】スズキのナナハン直4は輝かしい歴史を歩んできた名門(7枚)画像ギャラリー現行唯一の直4ナナハン、GSX-S750の生産終了が迫る!
近頃スズキは、二輪専門誌などの広告でGSX-S750の露出を増やしている。これは「生産終了」が近づいているのが理由だ。ストリートファイターであるGSX-S750は、2022年11月から適用される令和2年排ガス規制(ユーロ5相当)に対応せず、現行の2021年モデルがラストとなるのだ。
GSX-S750と言えば、現行モデル唯一のナナハン直4だけに、ネット界隈でも生産終了を嘆く声は多い。
600cc級より中低速がトルクフルな上に、リッターマシンのGX-S1000より高回転域を使えるので爽快。車体もコンパクトで、600と1000ccのイイトコドリのキャラとなる。まさに完成度の高い1台だ(おまけに価格も100万円切りと安い!)。
ファイナルモデルは用意されず、継続販売されている2021年型の青、グレー、黒が購入可能。確実に欲しい人は早めに動きたい。
スズキ伝統の直4ナナハン、46年の長い歴史に幕を降ろす
かつて「ナナハン」と言えば、オヤジ世代憧れの排気量だった。
1969年のホンダCB750フォアに始まるナナハン=750ccは日本伝統の排気量。メーカー自主規制により国内モデルのバイクは750ccが上限とされ、903ccのZ1を国内向けに排気量ダウンし、750RS(Z2)としたケースが有名だ。
そして1975年から、401cc以上のバイクに乗るには超難関の「限定解除」にパスする必要があった。ナナハンは一種のステイタスで、オヤジ世代のライダーには思い出深い排気量なのだ。ちなみに排気量の自主規制は1990年に撤廃され、国内にも1000cc超級のバイクが発売されることになる。
中でもスズキは、現代までナナハンにこだわってきたメーカーだ。
1985年、大きく重いナナハンという排気量帯に、初のレーサーレプリカであるGSX-R750を投入。世界初の油冷直4に加え、先進のアルミフレームによる圧倒的なパワーウェイトレシオで、世界のレースを席巻した。
やがてAMAスーパーバイクで4ストロークは750cc4気筒が上限となり、80年代後半からナナハンはレース直系クラスとして盛り上がっていく。
しかし、2004年にレギュレーションの変更で上限1000ccに。ナナハンはラインナップを大きく減らしたが、その後もスズキはGSX-R750をモデルチェンジしながら継続。排ガス規制の影響で欧州では2018年型がラストとなり、日本への逆輸入も終了となった。
現行のGSX-S750は、このGSX-R750の血統を継ぐ水冷直4ユニットを搭載。前身のGSR750を入れれば発売から11年での殿堂入りとなる。さらに、スズキのナナハン直4としては1976年登場のGS750から46年という長い歴史に幕を降ろすることになるのだ。
復活の新生ホーネットはナナハンで登場する模様
消えゆくナナハンの一方で、新たにデビューするナナハンもある。ホンダの新型「ホーネット」が750ccで登場するとの噂だ。
旧ホーネットは、日欧で人気を博したネイキッドシリーズ。旗艦は900だが、欧州で600が大ヒットし、2014年まで販売された。1996年デビューの250は日本でもベストセラーとなり、2008年の絶版後も中古車が高価格で取り引きされている。
現在、新型ホーネットはティザーやデザインスケッチのみ公開され、正式発表はまだだが、排気量は750ccと予想される。
さらに、同エンジンを積んだアドベンチャー系の「トランザルプ750」もスタンバイされているとの噂だ。
ただし旧ホーネットが直4だったのに対し、新型は新設計の270度クランク並列2気筒を搭載すると見られる。また、旧型ホーネットで特徴的だったセンターアップマフラーも採用しないが、コンセプトスケッチではホーネットらしいグラマラスなフォルムが継承されている。
6月に公開されたスケッチは、日本のR&Dと協力しつつ、イタリアにある欧州ホンダのR&Dセンターが作成。欧州ホンダは、CRF1100LアフリカツインやCB650R、X-ADVなど先進的なデザインを数多く手掛けている。新たなホーネットコンセプトは、ADV350のデザインを担当した28歳のデザイナー、ジョバンニ・ドヴィス氏によるものだ。
ホンダのデザイン哲学に基づき、「純粋に機能的なものをシンプルにつくる」とし、軽さとデザインを両立した造形を狙う。さらに、「最も怒っているスズメ蜂(ホーネット)を表現することでスポーティさを際立たせる」という。
スケッチからは倒立Fフォークや、右1本出しマフラー、トレリスフレームなどが確認できる。燃料タンクは旧ホーネットよりエッジが立ち、テールカウルはさらに小型化。より尻が切れ上がった攻撃的なストリートファイターになりそうだ。
現在、コスパに優れたパラツイン800cc前後のバイクが欧州で人気。新生ホーネットもこのカテゴリーに殴り込むことになるだろう。
発表は2022年秋のミラノショーと予想。マニュアル仕様のほか、ホンダ得意のセミオートマ=DCT仕様も投入されればライバルと差別化できるハズだ。
750cc直4は引退しても、ナナハンは不滅です!?
ちなみに現存するナナハンとして、まだホンダのNC750XとX-ADVがラインナップ中だ。ともに2021年型でフルチェンジし、新排ガス規制に適合したが、ユーロ6相当の次期排ガス規制には対応せず「現行型がラスト」との噂がある。ユーロ6の明確な導入時期は未定で、少なくとも2024年以降。これまでは安泰だろう。
ただし、こちらもエンジンは直4ではなく、並列2気筒。ナナハンの灯は今後も残るが、ナナハン直4としてはやはりGSX-S750が最後となる。
ライバルが姿を消す中、伝統のナナハン直4を頑なに守り続けてきたスズキに、今はひとまず拍手を贈りたい。
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