台湾当局が中国大陸への半導体に関する技術流出について、警戒を強めている。台湾メディアによると、台湾当局は5月23日〜26日、半導体やハイテク分野の技術者の違法な引き抜きをしている疑いで、台北や新竹、桃園などで中国企業10社を一斉に捜査した。
中国企業が台湾の技術者を雇用することは、現地の法律で認められる場合とそうでない場合があり、台湾の法律では、半導体の材料となるシリコンウェハーなどに投資をする際には審査が必要となる。
台湾のエレクトロニクス調査会社「イザヤ・リサーチ」によると、
中国の半導体チップメーカーは、昨年から従来の2〜3倍の高給で台湾の技術者を集めている。もっとも力を入れているのは集積回路の設計者で、そうした技術者は遠隔でも仕事ができる利点がある。
という。一方、中国のIT情報サイトでは、台湾当局による中国企業への捜査について、こう指摘していた。
台湾省の半導体技術者がなぜ中国企業に流出するかといえば、中国のほうが待遇が良いからだ。台湾よりも中国大陸で働いたほうが、将来的な展望が明るいのだから、どんな政策を打ったところで、技術者の移動は止められない。
法的な問題があることには触れず、競争原理の結果という見解を示した。
中国の半導体産業は発展しており、多くの技術者を惹きつけている。100社を調査しようとも1万社を調査しようとも、この流れは止めようもない。
台湾では2020年12月、中国大陸への違法な人材流出を防止するための専門チームを立ち上げた。現在は、違法な技術流出に関する刑罰や罰金について厳罰化が進んでいる。
中国企業への技術流出は、日本でもしばしば問題視する声があがっている。技術者や研究者が高待遇で可能性のある職場を選ぶのは当然であるからこそ、世界的に経済安全保障の潮流が強まる中にあっては十分な対策が必要になりそうだ。