ローヴェ・レーシングから2022年トタルエナジーズ・スパ24時間に参戦したニック・イェローリは、98号車BMW M3 GT3がレースの終盤にタイヤのパンクに見舞われるまで、「優勝を争うことができた」と感じていると語った。
このイギリス人ドライバーがフィニッシュまで残り2時間の時点で総合3番手を走行していたとき、98号車BMWはプーオンの進入で突然姿勢を乱した。その原因はピレリ製の右リヤタイヤのパンクにあり、ピットまでスロー走行を強いられたことが同車を表彰台から遠ざけ、総合6位でレースを終えさせる要因となった。
アウグスト・ファーフス、ニッキー・キャツバーグとチームを組んだイェロリーはSportscar365に対し、パンクの原因はすぐにはわからないが、ローヴェ・レーシングのチャンスに打撃を与えたことは明らかだったと述べた。
チェッカーまで残り2時間半、イェロリーはケメルストレートで71号車フェラーリ488 GT3エボ(アイアン・リンクス)のダニエル・セラをオーバーテイクし、最終的にこのレースを制したラファエル・マルチェッロ駆る88号車メルセデスAMG GT3(AMGチーム・アコーディスASP)の背後についた。
「マシンの下からは“バン”と音も“ガラガラ”という音もなかった。ただ、そういうこと(右リヤタイヤのパンク)があっただけだ」とイェローリ。
「たしかに、表彰台を逃すことになったが、今日は優勝争いをすることができた。とくに前半のスティントでは、もしも僕たちがもっと良いトラックポジションを持っていれば、(有利に)戦うことができたかもしれない」
「(パンクの後は)クルマに大きなダメージを与えないよう、できる限り早く(ピットに)戻した。ライバルたちが横を通り過ぎていくのを見て嫌な気分になったが、少なくともフィニッシュまでたどり着けたし、トップ6に2台が入った」
「(大事な場面で)パンクしたとしても完走できないよりはいい。来年のレースで(優勝を)取りに行けばいいんだ」
■少なくとも「勝負を挑むことはできた」
イェローリは、晴れて気温も高くなった日曜日の午後のコンディションのなかで、98号車BMWが優勝した88号車メルセデスに匹敵するパフォーマンスがあったと考えている。
予選15番手から急浮上したローヴェのクルーは、30日(土)22時前のスタート5時間経過時点で初めてトップに立ち、日没から夜明けまでの暗い時間帯に主要なコンテンダーのひとつであり続けた。
「パンクさえなければ、彼ら(88号車)のところに行くことができたと本当に思っている」とイェローリは語った。
「とくに僕たちの98号車は絶好調で、どのドライバーも素晴らしい仕事をしていた」
「実際のところ、どうなったかは僕たちには分からない。なぜなら僕らは最後の数スティントの戦いに直接参加していなかったからだ。けれども、少なくとも彼らに挑戦することはできたはずだ」
■姉妹車50号車BMWにもあったパンクの影響
ピレリタイヤのパンクはローヴェの姉妹車50号車BMW M4 GT3(BMWジュニアチーム・ウィズ・ローヴェ)を駆る、ダン・ハーパー、ニール・バーハーゲン、マックス・ヘッセのトリオの終盤の展開にも影響を与えた。
ハーパーによると、10時間目の赤旗中断で98号車に次ぐ総合2番手に浮上した彼らのマシンは、最後のスティントで右リヤが下がっていたという。
「僕たちは表彰台を手に入れる、もしくは優勝を争うところまでいった」と最終的に5位でレースを終えた50号車のハーパー。
「シスターカーもそうだ。でも、これがモータースポーツというものだ。僕たちのクルマは2台とも終盤にパンクに見舞われてしまった」
「予定よりも3周も早くピットインすることになり、時間も少し失ってしまった。10秒か15秒は損をしたね」
「全体的にはとても満足している。このレースはジュニアチームとして初めての経験だった。とてもクールな経験だったし、ローヴェの皆は素晴らしい仕事をした。勝てるクルマはあったけど、少し運が悪かっただけなんだ」
■ドライバビリティが向上したBMWの新型GT3
イェロリーは、BMW Mモータースポーツとローヴェ本体の2台が、M4 GT3のスパ・デビューから終盤まで混戦状態にあったことを考えると、ポジティブな材料が得られると感じているようだ。
先代GT3カーのBMW M6 GT3は、2016年にローヴェ、2018年にワーケンホルスト・モータースポーツの手によってスパで2度優勝しているが、直近の2年間は後者から参戦したメーカーサポートのクルマがともにリタイアという結果に終わっている。
「M6と比較して、スティントにおけるドライバビリティは大幅に向上している」とイェロリーは語った。
「M6 GT3を運転したことのない人は、あのクルマがどれだけ大変だったかを理解できないと思うが、新型のM4 GT3はそれよりもずっと扱いやすい」
「M6では、スティントの中盤から終盤にかけてポルシェをオーバーテイクするのは前代未聞のことだった。(新しいクルマは)クルマの快適性や基本的な部分が素晴らしく良くなっている。総じてM6 GT3の高速域での性能はそのままに、中低速でのパフォーマンスが向上した印象だ」
「来年はすべての物事を整理して、より大きな勝利に挑戦できるようになるはずだ」