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 7月1~3日にノリスリンク市街地でDTMドイツ・ツーリングカー選手権の併催イベントとして初のストリート戦を開催した2022年TCRヨーロッパ・シリーズ第4戦は、今季からシリーズに復帰したマイク・ハルダー(プロフィ・カー・チーム・ハルダー/FK8型ホンダ・シビック・タイプR TCR)がポール・トゥ・ウインを達成し、今季初優勝。リバースグリッドのレース2は、選手権首位のフランコ・ジロラミ(コムトゥユーPSSチーム・アウディスポーツ/アウディRS3 LMS 2)が制し、スタンディング上でのリードをさらに拡大している。

 年間全7戦を予定する今季のTCRヨーロッパ・シリーズは早くも折り返し点を迎え、シリーズ初開催となるニュルンベルクでの1戦を迎えた。DTMを代表する歴史的トラックは全長2.3kmと短いながら、8つのコーナーすべてでバトルが演出され、過去40年間で幾多の名勝負が繰り広げられてきた。

 そんな初開催地でのレースを前に、同じく市街地コースとなるヴィラレアルで開催されたWTCR世界ツーリングカー・カップ第5戦とのバッティングを受け、ランキング2位につけていたトム・コロネル(コムトゥユーDHLチーム・アウディスポーツ/アウディRS3 LMS 2)はポルトガルへ。代わってノルウェー出身のシリーズ経験者、スティアン・ポールセンがアウディのステアリングを握ることとなった。

「過去2年間、スティアンは毎週末のレース前に、俺がCOVID-19に感染したかどうかを尋ねるメッセージを送ってくれ、必要に応じて『代わりに出場する準備はできている』と言い続けていたんだ」と、キワどい冗談混じりで代打起用の背景を語ったコロネル。

「ヤツはときどき俺の映像を見て『彼のYouTubeやInstagramを見ると、体調が悪そうだ』とまで言っていた(笑)。だから機会があれば、彼に最初に電話をかけることを約束していたのさ」

 一方、第4戦終了後に突如の活動休止を表明したブルータル・フィッシュ・レーシングの決定を受け、代表のマーティン・ライバとともに2台体制でシーズンを開始したぺぺ・オリオラは、シート喪失直後にアグレッシブ・チーム・イタリアが救いの手を差し伸べ、後半戦はFK8型ホンダ・シビック・タイプR TCRからヒョンデ・エラントラN TCRにスイッチして、シリーズへの参戦継続が可能となった。

「本来は、来季からのヨーロッパ・シリーズへの参入を考えていたが、この機会が訪れた瞬間に掴むことにしたんだ」と語るのは、チーム代表のマウロ・グアスタマッキア。「ペペは一度もエラントラをドライブしたことはないし、我々もクムホタイヤを使ったことがない。簡単な作業でないことは認識しているよ」と、今季は地元イタリア・シリーズでケビン・チェコンとともにタイトル獲得を狙うグアスタマッキア代表。

 こうして始まったDTM併催の週末は、シリーズ初開催地にして無情の雨となり、各陣営、各ドライバーともにコース習熟もままならない状況で進み、フルウエットと路上のオイルで満足なグリップ感も得られぬまま、ジャック・ヤング(プロフィ・カー・チーム・ハルダー/FK8型ホンダ・シビック・タイプR TCR)と前線勝者イシドロ・カエハス(ボルケーノ・モータースポーツ/クプラ・レオン・コンペティションTCR)がそれぞれ2回のプラクティスでトップに立つ。

 快晴と酷暑の予報が出ていた土日に向け、各チームはFPを今後に向けたウエットテストとして捉え、パーツの確認やスリックとレインのミックスタイヤを1周ごとにローテーションしてデータ収集に励むなど、まったく別のプログラムとして活用すると、迎えた土曜予選はぶっつけ本番のドライ勝負に。

同週末にWTCRヴィラレアル戦に参加したトム・コロネル(コムトゥユーDHLチーム・アウディスポーツ/アウディRS3 LMS 2)は、代役としてスティアン・ポールセンを起用
同週末にWTCRヴィラレアル戦に参加したトム・コロネル(コムトゥユーDHLチーム・アウディスポーツ/アウディRS3 LMS 2)は、代役としてスティアン・ポールセンを起用
金曜FPは2回ともにフルウエットとなり、各陣営とも週末とは切り離し、データ収集のテストセッションとして活用した
金曜FPは2回ともにフルウエットとなり、各陣営とも週末とは切り離し、データ収集のテストセッションとして活用した
ドライに転じたぶっつけ本番の予選では「直線速度がない」シビックでマイク・ハルダー(プロフィ・カー・チーム・ハルダー/FK8型ホンダ・シビック・タイプR TCR)が最速タイムをマークした
ドライに転じたぶっつけ本番の予選では「直線速度がない」シビックでマイク・ハルダー(プロフィ・カー・チーム・ハルダー/FK8型ホンダ・シビック・タイプR TCR)が最速タイムをマークした
レース1スタートの攻防では、フェリーチェ・ジェルミニ(ターゲット・コンペティション/ヒョンデ・エラントラN TCR)が無念のオーバーシュート
レース1スタートの攻防では、フェリーチェ・ジェルミニ(ターゲット・コンペティション/ヒョンデ・エラントラN TCR)が無念のオーバーシュート

 路面改善も含めQ1、Q2ともにアタックごとにタイムが伸びていった勝負は、フェリーチェ・ジェルミニ(ターゲット・コンペティション/ヒョンデ・エラントラN TCR)を抑えたハルダー兄妹の兄が、今季初の最前列を獲得。2列目には第2戦で自身初優勝を果たしたヴィクトール・ダヴィドフスキー(コムトゥユーPSSチーム・アウディスポーツ/アウディRS3 LMS 2)と、元王者ジョシュ・ファイルズ(ターゲット・コンペティション/ヒョンデ・エラントラN TCR)が並ぶグリッドとなった。

 妹のミシェル、そしてJASモータースポーツ開発プログラム生のヤングとともに、自身のチームを率いる昨季のスペイン王者は、ホンダ・シビックに「直線速度がなく、市街地戦の攻防では厳しい状況になる」と予想して現地土曜17時40分からのレース1に挑むと、やはりスタート直後の長いターン1に向けた勝負でジェルミニに先行され、集団内でのバトルを強いられる……かと思われた。

 しかし続く切り返しヘアピンのターン2で、そのジェルミニがまさかのオーバーシュート。ドライ路面での感覚を掴み切れないままのレースが災いし、すぐさまハルダーが首位に返り咲く。

 さらに直後には「今回はテストと割り切り、クルマの習熟に集中する」と語り、予選首位からコンマ8秒差ながら、18番手からのスタートを切っていたオリオラが、そのターン2で縁石によるダメージでクルマを止め、早くもセーフティカー(SC)出動の展開に。

 リスタート後は背後のファイルズとジロラミ&ダヴィドフスキーの師弟ペアによる2台のアウディ、そしてカエハスのクプラそれぞれが首位のシビックに勝る最高速とラップペースを披露したものの、各自でポジション争いを強いられハルダーに先行することは叶わず。26周を走破した地元ドイツ出身ドライバーが、2019年王者ファイルズを0.473秒差で抑え切り、シリーズ復帰後の初勝利を手にした。

「本当に直線速度のBoP(バランス・オブ・パフォーマンス/性能調整)は考え直した方が良いね! ブレーキングゾーンに飛び込むたび、ミラーで背後を確認する必要に迫られたクレイジーなレースだったよ。背後では彼らが常に戦っていて、何をしているかを知る必要があったんだ」と、厳しい展開を振り返ったハルダー。

「最後にはジョシュ(・ファイルズ)が背後にいて、彼は非常に経験豊富なドライバーだし、TCRドイツ時代からともに戦って来た。彼の方が1周のペースは優れていたが、毎周セクター2でギャップを開くことができて幸運だったね」と、今季はTCRデンマークにも並行参戦し破竹の連勝劇を重ねているハルダー。

 明けた日曜実施のレース2は、リバースグリッド上位勢がターン2で多重アクシデントを引き起こす展開となり、その混乱をくぐり抜けた前日3位表彰台のジロラミが、リバースポール発進のクリム・ガブリロフ(ボルケーノ・モータースポーツ/クプラ・レオン・コンペティションTCR)に迫る展開に。レース中盤、再びのSCリスタートからガブリロフをパスしたジロラミが今季2勝目を飾り、2位にガブリロフ、3位には連続表彰台のファイルズが続く結果となった。

 これで今季開幕から連続トップ5フィニッシュを継続するジロラミが選手権リードを拡大し、72点差でファイルズ、その6点差でカエハスが続くオーダーとなったTCRヨーロッパ・シリーズ。続く2022年第6戦は、8月26〜28日に同じくドイツのニュルブルクリンクで再びのDTM併催戦として開催される。

速さに勝る後続の追撃をかわしたマイク・ハルダーが、復帰後初優勝を飾っている
速さに勝る後続の追撃をかわしたマイク・ハルダーが、復帰後初優勝を飾っている
前線勝者イシドロ・カエハス(ボルケーノ・モータースポーツ/クプラ・レオン・コンペティションTCR)やクリム・ガブリロフら、クプラ陣営も速さを見せた
前線勝者イシドロ・カエハス(ボルケーノ・モータースポーツ/クプラ・レオン・コンペティションTCR)やクリム・ガブリロフら、クプラ陣営も速さを見せた
選手権首位のフランコ・ジロラミ(コムトゥユーPSSチーム・アウディスポーツ/アウディRS3 LMS 2)がレース2を制する
選手権首位のフランコ・ジロラミ(コムトゥユーPSSチーム・アウディスポーツ/アウディRS3 LMS 2)がレース2を制する
これでジロラミは今季開幕から連続トップ5フィニッシュを継続。選手権争いでも大量リードを築いた
これでジロラミは今季開幕から連続トップ5フィニッシュを継続。選手権争いでも大量リードを築いた