2021年12月に“アルゼンチン”でシェイクダウンを実施し、2022年4月にはTCR規定を統括するWSC技術部門監督のもと、完全なホモロゲーション取得に向けた審査に臨んだ新型『トヨタ・カローラセダンGRスポーツTCR(仮称)』が、晴れて公認手続きを完了し正式なTCR認証を取得。8月27〜28日にテルマス・デ・リオ・オンドで開催されるTCRサウスアメリカ・シリーズの第6戦で実戦デビューする予定となった。
アルゼンチンの人気ツーリングカー選手権、スーパーTC2000(STC2000)に参戦するTOYOTA GAZOO Racingアルゼンティーナ(TGRA)と、その母体であるトヨタ・アルゼンティーナは、今から約2年前にプロジェクトが公となった新型TCRモデルの開発計画を粛々と進行させてきた。
その新型TCRモデルは正式デビューと本格デリバリーに先立ち、昨年末にはその姿を初公開するとともに、約2年の歳月を掛けてプロジェクトを担ってきたTGRAのメンバーたちを前に、TOYOTA GAZOO Racingラテンアメリカと契約を結ぶエース、マティアス・ロッシの手でトラックデビューを飾っていた。
アルゼンチンのコルドバ州北部、アルタグラシアに位置するアウトドローモ・オスカー・カバレンで実施されたテストには、WTCC世界ツーリングカー選手権3冠を誇る地元の英雄ホセ-マリア・ロペスも姿を見せ、まずは開発プロジェクトを牽引した現地法人CEO兼TGRA代表ダニエル・エレーロの手でコースイン。
「このプロジェクトにより、アルゼンチン国内でのマニュファクチャリング業務をさらに拡大することになるだろう」と語っていたエレーロ代表も「カローラのパフォーマンスに感銘を受けた」と、その仕上がりに手応えを得ていた。
昨年の段階でこの新型TCRモデルのグローバルな販売を計画していたTGRAだが、広報担当者によれば「もちろん、この新型TCR車両は世界中のTCRシリーズで活動するカスタマーに向け、グローバル展開することを目指して開発されています。TGRのネットワークと協力し、ヨーロッパ、アジア、オーストラリアのチームに技術サポートを提供する予定です」と、早くも来季に向けたデリバリーに意欲を見せる。
■「日本のGRカンパニーやTGRヨーロッパと協力していく」とTGRA。BoPも決定
「我々TGRAとしては、TCR競技用のトヨタ車の開発とその後のホモロゲーション、製造、およびマーケティングにのみ責任を負っています。このように、我々は日本のGRカンパニーやTGRヨーロッパと協力して取り組んでいく計画です」
この4月にもイタリアの小規模コンストラクターであるテクノドン・スポーツが開発した『フィアット・ティーポTCR』と同時に、ドイツ、イタリアでTCRホモロゲ取得プロセスに臨んでいた新型『トヨタ・カローラセダンGRスポーツTCR(仮称)』だが、すでに地域ホモロゲーションを持ち、一足先にグローバル公認取得を果たしたフィアットに遅れること約2カ月で、公認手続きが無事に完了したことが発表された。
7月6日に発行された『TCR Technical Bulletin n.7』に従い、TCR認定車リストに追加されたカローラは、BoP(バランス・オブ・パフォーマンス/性能調整)測定の結果、バラストなしの1265kg(耐久レース時は1250kg)のレーシングウエイトに。トヨタ初の過給ダウンサイジングターボとして登場した2リッター直列4気筒エンジンの“8AR-FTS”型を搭載するエンジンは、ECU制御による出力で100%、最低地上高は80mmの割り当てとなった。
一方、同じブルテンに記載された『フィアット・ティーポTCR』も、ミニマム・レーシング・ウエイトが10kg削減され、1265kgから1255kgに。最低地上高も80mmから70mmに減じる措置が採られた。
将来的にはWTCR世界ツーリングカー・カップを頂点に、ヨーロッパ、アジア、そしてサウスアメリカなど各地域のリージョン選手権や、日本を含む各国のTCR認可シリーズに参戦するべくデリバリーが開始される計画の新型『トヨタ・カローラセダンGRスポーツTCR(仮称)』だが、前出のとおり本格販売に先立ち、盛り上がりを見せる創設2年目地元のリージョン選手権、TCRサウスアメリカの第6戦でレースデビューを飾る予定で、チームやドライバーもTGRAによる“セミワークス体制”となることが予想されている。