今年1月にデビューしたばかりのトヨタGRヤリス・ラリー1が、WRC第7戦ラリー・エストニアで早くも大幅改良された。ポイントはふたつ、リヤウイングとエンジンである。
リヤウイングは、言うまでもなくリヤのダウンフォースを確保するための重要なパーツ。それが6戦を戦っただけでリニューアルされたのだから、新しいリヤウイングはよっぽど効果があるのだろう。
GRヤリス・ラリー1のリヤウイングは、これまでライバルのヒョンデi20 Nラリー1や、Mスポーツ・フォード・プーマ・ラリー1とは異なる方向性のデザインだった。ヒョンデとフォードは従来のWRカーに近いデザインだったが、GRヤリスはロワープレーン、アッパープレーンとも目一杯横方向に長く、その2枚の板をバーティカルフィン状の4枚のステーで繋ぐような形だった。
しかし、新しいリヤウイングはロワープレーンの両サイドが一段低くなり、ウイングレット的な造形に。また、アッパープレーン両端の下方に垂れ下がっている部分、エンドプレートに相当する部分にも大きな段差が設けられ、やはりウイングレット状になった。さらに、アッパープレーンを支える2枚の外側のステー(実は内側の2枚はロワープレーンに接しておらずステー機能はない)は、後方に大きく面積が広げられた。
以上のように、かなり大きなデザイン変更であり、ライバル2台の方向に少し寄っていったともいえる。聞くところによると、ラリー1のリヤウイング規定を定める際、付加物的なサイドのウイングレットは廃止する方向性で話が進んでいたようだ。
そこでトヨタは、ウイングレットに頼らずともダウンフォースを効果的に確保できるような形状を考案したようだ。ところが、土壇場でウイングレットがOKとなり、ヒョンデとフォードはWRカーに近い形のウイングレットを採用。トヨタだけが大きく異なる方向性のデザインとなった。
エンジンについては、チームからのオフィシャルなアナウンスはないが、主にパワー面を強化したといわれている。ラリー1のエンジンはここまでヒョンデがもっともパワフルなのではないかと、WRCのサービスパークでは噂されていた。
今季、後半戦はエストニア、フィンランド、イープル(ベルギー)という、アベレージスピードが高いラリーが続く。そういったラリーではエンジンのパワーが非常に重要であり、同時にダウンフォースも求められる。トヨタが半年でGRヤリス・ラリー1のリヤウイングとエンジンをアップデートしたのは、後半戦も戦いを有利に進めるためだろう。