もっと詳しく

 レース界のマニアック“ヘンタイ”カメラマンこと鈴木紳平氏が、今年も愛してやまないル・マン24時間レースへと取材に赴きました。コロナ禍の各種制限がほぼ解除されたフランス・ル・マンはどんな様子なのか? ヘン愛に満ちた鈴木氏の視点で、ル・マン現地の“細部”をお伝えしていきます。

 前回、第1回では本番に向けて準備が進むサルト・サーキットの様子を伝えてくれました鈴木氏が、今回はサーキット正門横に立つル・マン・ミュージアムへと潜入。マニア垂涎モノの歴代名車の数々、最新のショーカー、それを観察する人々などについてレポートします。

* * * * * * * 

 日本のレースファンの皆様、いかがお過ごしでしょうか。さっそくですがル・マンブログ第2回“ル・マン・ミュージアム 四輪編”、いってみましょう!


 ル・マン・ミュージアム、やってまいりました。今年の推しは2023年、ル・マンに帰ってくるプジョーであります。毎年少しずつ展示が変わるこのミュージアム、中の様子を覗いてみましょう。


 入場するとまずル・マンに足跡を残した人物コーナーです。フェラーリさんにベントレーさん、フォードさん。あれ? なんか見慣れたお顔がありますね……。


 村田久武さんです。ハイブリッドをル・マン24時間レースに持ち込み、トヨタを勝利に導いた人物として紹介されています。ちなみに、一緒に展示されているのはトヨタTS020ですが、村田さんは当該車両とは何の関係もありません。


 他にはフランスの英雄、アンリ・ペスカローロさん。マトラのカムカバーが最高です。ちなみに1973年にルマン2勝目をマトラ シムカで達成した時の相棒、ジェラール・ラルースさんが今年のル・マン24時間のグランドマーシャルです。


 こちらは言わずと知れたスティーブ・マックイーンさん、栄光のル・マンであります。あの映画を見て胸ときめかせた団塊の世代がどれほどいたことでしょうか。


 日本でも馴染み深いタチアナ・カルデロンさんもいました。


 もちろん、フェルナンド・アロンソ様のコーナーもあります。


 ミュージアムの一角には中嶋一貴さんの最後のルマン制覇の相棒2020年のTS050ハイブリッドが、昨年ル・マン・ミュージアムに寄贈され展示されています。コロナ禍、無観客で行われたルマン24時間。ル・マンの灯は絶やさない、そんな決意の中で行われたレースと感じました。


 TS050と一緒にトヨタ94C-Vが展示されています。


 昨年のルマン24時間でトロフィー返還式に突如現れたトヨタ 94C-V。車検場からR36V独特のターボ排気音を耳にしたときは鳥肌がたちました。


 ドライバーラインアップには、ドライブするはずだったラッツェンバーガーさんの名も。94C-Vはあの時のままです。レストアし走らせてくれた皆さんに心から感謝したいと思います。


 レストアといえば今年からルマンミュージアムの裏側にある整備場が見られるようになっています。94C-Vもここでレストアされたのでしょうか。


 左リアホイールにはカタカナで‘コロガシホイール’とあります。タイヤにはダンロップの表記は無く、アメリカ製の無名記のタイヤが装着されていました。


 トヨタコーナーには、こちらもトヨタより寄贈されたサインガードがあり、記念写真コーナーになっています。が、お子さん達あまりテンションが上がらない様子です。


 じゃあ次は表彰台、といきますが……こちらもテンションは上がりません。


 展示の一角にはフェラーリコーナーも。フェラーリ512 Mカッコいいですが、私的にはもっとステッカーやテープが貼られた、実戦仕様の方が好みです。


 もちろんこの車も展示されています。みんな大好き2015年ニッサン GT-R LM ニスモであります。その年の最高速336km/hを記録しています。


 ル・マン24時間の歴史は、記録の歴史でもあります。ミュージアムの一角には最高速計測機器紹介コーナーがあり、1989年、セカテバWMプジョーP88の405km/hを計測した機器が展示されていました。

 当時の最高速計測は各マニュファクチャラーが独自に計測し、夜などは暗くて車が見えないため、音で車種を判別していた……なんて話を村田久武さんから聞いた記憶があります。真夜中、真っ暗のミュルサンヌ・ストレートで「う~~ん、ジャガー!」とか言いながら最高速を計測していたと笑いながら話してくれたことを思い出します。


 プジョーの話がでてきたところでそろそろプジョーコーナーへ行きましょう。まずは1992年優勝の905がお出迎えです。


 傍らには3.5リッターV型10気筒エンジンが展示されています、車は何回か見ていますがエンジンは初めてです。型式名称とかは無いんですよね。


 全体像を眺めましょう。まずは右バンクから。車体に搭載される際はセミストレスマウントとなります。


 バンク角は80度。今のレーシングエンジンと見比べるとクラッチはやや大きめに見えます。それにしても腰下のブロック細いですね。


 美しいので左バンクも見ます。インジェクターはエアボックスの外に設置されています。


 次にいきましょう。隣には2009年の優勝車両、908 HDI FAP。


 2022 世界耐久選手権第4戦でデビュー予定の『プジョー 9X8』(ショーカー)であります。実物を初めて見ましたが意外と大きいです。そして前が見え辛そうです。


 ちょっと細部を見ましょう。まずはサイドポンツーンから。独特な形状ですがカッコイイです。


 肉抜きされたフロントブレーキキャリパーは金色に塗装され、“プジョー・スポール”のロゴが配されています。


 コクピットもチラ見しましょう。7速・310km/hと表示されています。


 青年も興味津々です。が、奥の友達は帰りたがっている様子です。「早くしろよ」「もうちょっとだけ」という会話が聞こえてきそうです。


 そうこうしているうちに友達は出て行ってしまいました。「俺、外でタバコ吸ってっから」。そんな言葉も耳に入らず青年の撮影は熱を帯び、ここから動画を撮り始めたりしていました。


 さぁ皆さん、ル・マン・ミュージアム前編いかがだったでしょうか。毎年いろいろと趣向を変えて来場者を楽しませてくれるル・マン・ミュージアム。入り口横には売店もあり今年はスティーブ・マックイーンさんが出迎えてくれます。100周年の来年はどうなってしまうのでしょうか。売店で散財の予感しかありません。

 次回、ミュージアム二輪編ではル・マン24時間第1回優勝トロフィー、そして無敵艦隊が登場します。お楽しみに!