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 6月20〜21日、第4回となるスーパーフォーミュラの次世代車両開発テストが宮城県のスポーツランドSUGOで行われ、2日間・計8時間にわたってホンダエンジン、トヨタエンジン搭載の2台のSF19開発車両が、それぞれ塚越広大、石浦宏明のドライブにより走行した。

 全日本スーパーフォーミュラ選手権をプロモートするJRP日本レースプロモーションは、『SUPER FORMULA NEXT 50(ゴー)』を掲げ、この先の50年もモータースポーツが持続可能であるよう、さまざまな取り組みを行なっている。

 この次世代車両開発テストでは、『カーボンニュートラルの実現に向けた素材・タイヤ・燃料に関する実験』『ドライバーの力が最大限引き出せるエアロダイナミクス(空力)の改善』『エンターテインメントの魅力向上に繋がる車両開発』という3つのテーマで、技術開発を進めていくとしている。

 SUGOでのテストは、両日とも好天に恵まれた。参戦各チームが持ち回りでオペレーションを担当するこの開発テスト。第5戦明けの実施となった今回は、トヨタエンジン搭載車両はP.MU/CERUMO・INGINGが、ホンダエンジン搭載車両はB-Max Racing Teamが担うこととなった。

 今回は、過去3回のテストで見えてきた良い部分についてさらにポイントを絞り、SUGOでどのように再評価できるか、さまざまな比較テストが行われた。

 燃料の面では、3種類⽬となるカーボンニュートラル(CN)フューエルを使ったエンジンテストが行われた。また、これまでのテストで良い評価が得られたタイヤの構造部分に、コンパウンドが異なる複数の開発タイヤを持ち込み、テストを実施。そして、Bcomp社の⿇などの天然素材を活⽤したバイオコンポジット素材をボディに採⽤し、熱、⽔、強度に関する実証テストが行われた。

 さらに空力面では、過去3 回のテストで確認された、安全⾛⾏に必要な『絶対ダウンフォース量』(現在レースで得られているダウンフォース量より少ない値)で2台の追従走行を行い、追い越しやバトルを⽣み出すことができるか、といったテストが⾏われた。

 加えて、既報のとおり、今回初めてマシンの『⾳』に関するテストが実施された。より『レーシング』な⾳を⽬指し、トヨタエンジン搭載車両において、排気のメインパイプに加えウェストゲートパイプを試験的に装着し、⾼⾳の伸びがどの程度変わるか、熱対策はどうかなどの項⽬が評価された。

スーパーフォーミュラ次世代車両開発テスト トヨタ/TRDエンジン搭載車両、通称“赤寅”
スーパーフォーミュラ次世代車両開発テスト トヨタ/TRDエンジン搭載車両、通称“赤寅”

 ドライブした石浦はこの音について、「外から聞こえている以上に、ドライビングしている⽅が⾳の違いを感じました」とコメントしている。

「乗っている時は、楽器のように、ちょっと甲⾼い⾳が、排気が右にあるので右の⽿だけに⼊ってきました。ただ左は静かで、その左右の差が最初は気になりましたが、いつもより(エンジンの)⾼回転域を使っているような⾳ですので、⾛⾏中は『お、これは速いぞ』というイメージがあり、クルマの速さと⾳が合っていると思いました」

■次回からホンダエンジン搭載車でも“音テスト”実施へ

 塚越広大は、追従走行による空力試験について、次のように述べている。

「空⼒に関しては、ここまで3回のテストと、基本的な評価は今回も余り変わりません。ただ追⾛時、ラインが交錯する場合や、後ろについた時、フルダウンフォースの場合は多く抜ける感じがあって、変化量は⼤きいです」

「それに対して、ダウンフォースを減らした時の⽅が、抜ける量は少ないので、変化量も少ないと思います。交差することがなければ、最終コーナーなどはある⼀定の距離感で正常に⾛れるな、と改めて分かりました」

「ある程度の距離がある時は、どちらのダウンフォース量でもあまり変わらないですが、近づいた時の変化量には違いがあると思いました。これまでのサーキットでも、ダウンフォースを減らせばオーバーテイクが増えるのかというと、それだけではまだ難しいかなという感触があります。その感触はSUGOでも同じです」

 なお、今回試された新たなCN燃料については、ふたりの開発ドライバーはともに従来の燃料との差をそれほど感じず、違和感なく走行できたと語っている。

スポーツランドSUGOで追従走行試験を行う2台のSF19開発車両
スポーツランドSUGOで追従走行試験を行う2台のSF19開発車両
3種類目のカーボンニュートラル燃料が試験された
3種類目のカーボンニュートラル燃料が試験された

 NEXT 50プロジェクトの永井洋治テクニカルアドバイザーは、エンジン音開発について「まずは『できた』ということを評価したいと思います」と語っている。

「実際に手応えはありましたので、今後もっとチューニングすることで、ポテンシャルはまだまだ引き出せると思います」

 永井氏によれば、次回からはホンダエンジン搭載車両でも、この音に関するテストを実施する予定だという。

 また、新燃料の面でも今回新たに投入したものに、手応えを得たようだ。

「2⽇⽬は3種類⽬の燃料のテストを⾏いました。製造会社が違うので、成分が微妙に異なっていたり、作り⽅にも少し違いがあると思います。エンジニアリング的にネガな要素は、今までのところ今回のものが⼀番少ないかも知れないなという感触を持ちました」

 次回のテストは7月18・19日に、第6戦明けの富士スピードウェイで行われる。永井氏はこのテストに「雨を期待している」という。ウエットタイヤのテストがしたい、というのがその理由だ。

「ドライタイヤは⼤体絞り込めて来ましたが、ウエットタイヤは1回もテストができていないので、そこが今最⼤の課題です。中でも、ウエットのウォームアップ性を試したいのですが、気温が⾼くなってきて試せない条件になって来ています。⾬が降って、少しでも路⾯温度が下がった状態で、次回テストができれば嬉しいです。バイオコンポジット素材も⾬で試したいと思っています」

新素材を使用したカウルの試験も引き続き行われている
新素材を使用したカウルの試験も引き続き行われている
路面温度が上がるなか、新たなタイヤの開発も進められた
路面温度が上がるなか、新たなタイヤの開発も進められた
全体ミーティングでコメントする開発ドライバーの石浦宏明
全体ミーティングでコメントする開発ドライバーの石浦宏明