7月9~10日にベルギーのゾルダーで開催予定のFIA ETCRことeツーリングカー・ワールドカップ第4戦にて、ヒョンデ・モータースポーツが“スペシャル・デモンストレーション”の開催を決定。所属選手としてWRC世界ラリー選手権を戦うティエリー・ヌービルと、同じくWTCR世界ツーリングカー・カップ2019王者ノルベルト・ミケリスが、ファクトリードライバーとしてお互いの“愛機”を初めてスワップし、ヒョンデ・ヴェロスターN ETCRとi20 Nラリー1のステアリングを握る。
レースウイーク土曜午後に実施予定の同イベントでは、ベルギー出身のヌービルがゾルダーのパドックに赴き、ETCR第4戦を控えたミケリスのフル電動ツーリングカーのシートに座り、ヴェロスターN ETCRをサンプリングすることとなった。
「ゾルダーでお互いのクルマを交換することは、僕やノルビ(ミケリスの愛称)だけでなく、FIA ETCRの週末の観客にとっても非常に楽しい時間になるはずだ。他のシリーズやレースの分野で戦うマシンをドライブすることは、つねに興味深いものであり、彼らからは本当に多くを学ぶことができるからね」と、自身もTCRドイツのシリーズ戦にワイルドカード参戦し、ポール・トゥ・ウインを飾った経験も持つヌービル。
フル電動シリーズとして2年目を迎えたETCRと、今季より本格ハイブリッド時代が到来したWRCのラリー1規定車両は、どちらも電動化技術を採用していながら、その構成は大きく異なる。
ヒョンデとしても初のEVツーリングカーとして誕生したヴェロスターN ETCRは、シリーズに最初にコミットしたマニュファクチャラーとして車両規定の“メートル原器”にもなっており、500kwのピークパワーを発揮する後輪駆動を採用する。
一方のラリー1は、380PSを誇る内燃機関の直噴ターボが4輪に駆動力を供給し、モーター出力は最大100kWに規制される。また、このハイブリッド機構は航続距離が約20kmのEV走行モードも備え、主にサービスパークと各SS間のリエゾン(ロードセクション)区間で使用され、さらにステージではパフォーマンスを支える電動ブーストとしての役割も担う。
■ヌービル「非常に強力だろうけど、同時に重さもあるだろうから、それがどんな加速感かを味わってみたい」
「それだけに、ヴェロスターN ETCRは本当に興味深いクルマのはずさ。僕が普段ドライブするラリー1のハイブリッドに比べて、ざっと5倍になる500kWの出力が備わるんだからね。非常に強力だろうけど、同時に重さもあるだろうから、それがどんな加速感かを味わってみたい。そしてゾルダーのサーキットでどんなハンドリングと旋回性能を見せてくれるか、それを知るのが待ち切れない気分だよ」と、初ドライブへの期待を語ったヌービル。
「もちろん、僕と同様にノルビをラリー1車両に乗せるのも楽しいだろうね。彼にとってはまったく別の何かに飛び込むことになるし、ベルギーのファンの前で彼を『僕のオフィス』に連れて行き、最新のWRCカーに対する反応を見るのは、誰にとっても素晴らしいショーになるはずさ!」
そのミケリスは、シリーズ初年度のPURE ETCRを経てFIAの世界選手権格式となった今季より、満を持して電動チャンピオンシップへの参戦を開始し、WTCRでのドライブと並行してエレクトリック・モータースポーツの流儀を学んでいる。
元WTCR王者は、この8月にベルギーでの開催が迫ったイプルー・ラリーで地元戦連覇を目指すヌービルのi20 Nラリー1を「大切に」ドライブすることになる。
「もちろん、非常に興味深い経験になるだろう。WRCのファクトリーカーはいつだって『スペクタキュラー』な存在だし、2022年の新規定車両もその例外ではないね。ティエリーは僕にこのクルマを最大限に活用するためのいくつかのヒントを与えてくれるはずだし、お互いに楽しみながら、ファンのための良いショーを披露できるはずだよ」と続けたミケリス。
「今季のFIA ETCRが僕にとって最初のEVレーシングカーだったし、同じように電力を使用するトップカテゴリーのハイブリッドを試すのもこれが初めてだ。近い将来……とくにTCR規定でもハイブリッド・システムが登場するし、追加ブーストがどのように感じられるか、非常に興味深いよ」
「その点で、僕はいくつか追加のテストをこっそり入れておけば、来季は有利なシーズンスタートが狙えそうだね(笑)。ティエリーは素晴らしいドライバーで、WRCのスターというだけでなく、以前はTCRでも優勝している。だからヴェロスターN ETCRでもすぐに『くつろげる』だろうね。彼がどんなインプレッションを残すのか、それを聞くのも楽しみだよ!」