6月11日から12日にかけてフランス、ル・マンのサルト・サーキットでWEC世界耐久選手権第3戦/第90回ル・マン24時間レースの決勝レースが行われ、2台の『トヨタGR010ハイブリッド』でハイパーカークラスに参戦しているTOYOTA GAZOO Racingがワン・ツー・フィニッシュを達成し、ル・マン5連覇を果たした。
セバスチャン・ブエミ、ブレンドン・ハートレー、平川亮の3名が乗り込む8号車トヨタGR010ハイブリッドは、ポールポジションからレースをスタートし完璧なレース運びで380周を走破。12日(日)現地16時、スタンドを埋め尽くした熱狂的なファンが見守る中、総合トップでチェッカーフラッグを受けた。
ブエミはこの勝利で自身のル・マン通算優勝記録を4回へと伸ばし、スイス人ドライバーとしての最多勝記録を更新している。また、ハートレーも自身3度目の勝利でニュージーランド人の最多勝ドライバーに。
今年最高峰クラスにデビューした平川は、今回が3度目のル・マン挑戦。TGRのメンバーとしては初めてのル・マンだったが、見事に総合優勝を勝ち取り、日本人ドライバーとして表彰台の頂点に立った5人目のドライバーとなっている。
前回大会の覇者である小林可夢偉、マイク・コンウェイ、ホセ-マリア・ロペスの7号車トヨタGR010ハイブリッドは、レース序盤から8号車と僅差のトップ争いを繰り広げていた。しかし、総合首位で迎えた256周目にフロントモーター関連の電装系トラブルに見舞われ一時ストップ。システムを再起動することでトラブルを解決したが、最後までこのタイムロスが響き最終的には8号車から遅れること2分1秒222の総合2位フィニッシュとなった。
ル・マンで4度目のワン・ツー・フィニッシュを達成したチームは、WECのマニュファクチャラーズランキングで首位に浮上し、2位のアルピーヌに22ポイント差をつけた。また、ドライバーズポイントでも8号車の3名が首位のアルピーヌ36号車組に3ポイント差のランキング2番手と大きく躍進。7号車の3人は選手権首位と20ポイント差のランキング4番手につけている。
そんなTOYOTA GAZOO Racing WECチームのドライバー6名のコメントは以下のとおりだ。
■7号車トヨタGR010ハイブリッド
●小林可夢偉(チーム代表兼ドライバー)
「8号車で優勝を果たしたセバスチャン、ブレンドン、亮の3人を祝福します。残念ながら我々の7号車は朝方、トラブルに見舞われリードを失ってしまいました。8号車とはそれまでずっと僅差の良いバトルを繰り広げていただけに、トラブルは本当に残念です。24時間レースではこういうことも時々起こります」
「とはいえ、7号車が無事にレースに復帰し、TOYOTA GAZOO Racingの2台が同一周回のワン・ツー・でフィニッシュできたことはチームによる素晴らしい努力のおかげです」
「このレースウイーク、本当に頑張ってくれたマイクとホセ、そして、7号車のクルーにも感謝します。ワン・ツー・フィニッシュを目指してル・マンに挑みましたが、チーム全員の頑張りによりそれを達成することができ、本当に感謝しています」
●マイク・コンウェイ
「ここル・マンにはあまり好かれていない気がする。いつも何かが起こってしまうんだ。昨年は勝つことができたが、それまで何度もここで厳しい思いをしてきた」
「優勝したチームメイトの8号車、とくに亮はおめでとう。初挑戦で優勝できるというのは格別だろう。可夢偉とホセとともにレースを戦うのはいつも喜びであり、ル・マン勝利にすべてを捧げてきたが、あと一歩届かなかった」
「とはいえ、チームのワン・ツー・フィニッシュと、TOYOTA GAZOO Racingの5連覇は素晴らしい結果で誇りに思うし、東富士やドイツ・ケルンのチーム関係者全員に感謝している。まだWECのチャンピオン争いは3戦残っているので、気持ちを切り替えてプッシュしていくよ」
●ホセ-マリア・ロペス
「ル・マンで優勝できなかったのは悔しい。しかし、我々はチーム全員が勝利を目指して戦っており、負けを認めてチームがワン・ツー・フィニッシュを果たせたという好結果を素直に喜びたいと思う。8号車のクルー、おめでとう」
「素晴らしい戦いぶりだった。ほぼ完璧なレースを戦う中、ハイパーカークラスのライバルは皆、何らかのトラブルに見舞われたこともあり、我々2台は大きく差を広げることができた。その後も完璧を目指して戦い続け、GR010ハイブリッドの速さも示せて勝利も見えていただけに、トラブルに見舞われたのは本当に悔しい」
「しかし、チームのおかげでコースに復帰し、戦い続けることができた。TOYOTA GAZOO Racingのワン・ツー・フィニッシュに貢献できたことには満足している」
■8号車トヨタGR010ハイブリッド
●セバスチャン・ブエミ
「亮とブレンドンとともに、表彰台の中央に立つという格別な瞬間を味わい、その後の自分を言葉で表すのは難しい。初めて8号車のクルーとしてル・マンに出場した亮とともに優勝できたのは最高だ。彼は本当に素晴らしい走りで、その功績を称えたいと思う」
「チーム全員、そして、我々8号車のクルーも一切ミスすることなく、車両にもダメージを負わず、完璧なレースを戦い抜いた。僕にとってル・マンでの4度目の勝利、また、TOYOTA GAZOO Racingの5連覇を勝ち取ることができ、信じられない気持ちだ。今日達成した偉業を実感するには少し時間が必要になりそうだ」
●ブレンドン・ハートレー
「TOYOTA GAZOO Racingのル・マンでのワン・ツー・フィニッシュを達成できてうれしいよ。ハイパーポールでアタックを担当し、ポールポジションを獲得した時も素晴らしい気分だったけど、決勝のチェッカーを受けたときはさらに最高だった! ル・マンで最後のドライバーを担当しトップでチェッカーを受けたのは初めての体験だったので、フィニッシュラインを越えたときは感無量だった」
「レース中は結果については考えないようにしている。レースは、とくにトヨタにとっては、最後の最後まで何が起こるかわからないからだ。だからこそチェッカーを受けたときにはすべての感情があふれ出し、信じられない気分だったよ」
「亮は本当に良いドライバーで、彼が初優勝を果たせたこともうれしい。我々は皆、彼のことが大好きで、すでに彼は強力なチームの一員だ。また、7号車のクルーとの関係も良く、レースの大半で、素晴らしいバトルを楽しむことができた。バトルの間はずっと全開だったが、彼らにトラブルが発生したあとは、リスクを最小限に抑えて走っていた」
●平川亮
「伝説のドライバーが並ぶ、ル・マンウイナーのメンバーリストに名を連ねることができ、光栄です。正直なところ、まだ夢が叶ったという実感がありません。ずっと接戦で、とくに7号車とは素晴らしいバトルができました」
「私がチームに加わって以来、沢山助けてくれたセバスチャンとブレンドンには本当に感謝していますし、彼らと同じチームでドライブでき光栄でした。TGRのメンバーとして初めてのル・マンでワン・ツー・フィニッシュを飾れたというのも最高ですし、ハードワークを続けてくれたチーム全員に感謝します」
「我々8号車は戦略もピットワークも完璧でしたし、一切トラブルも起こらないレースでした。これ以上のものは望めないと思います」